「と、突然どうしたんだ、新手のマルチ勧誘か?」
「マ、マルチ? あんまり知らない単語だけど、変な勧誘じゃないです。あ、でも勧誘は合ってるのか」
そう言いながら、ユキは微笑んで会話を進めていく。
「私たちのパーティーに入ってみないアレン君? 実はこのパーティー新しく作ったばっかりでさ、アレン君みたいな魔法が使える人間が欲しいんだよね」
「い、良いのか? 俺なんかが入っても?」
「もちろん良いに決まってるでしょ! ねえ皆!」
ユキは張り切った様子で後ろにいるメンバーの顔を見る。だが俺が見る限り、少し引きづった顔をしているようだが。そう思っていると、魔法帽子を被った小柄な女の子が口を開く。
「まあ、良いんじゃない? 正直言って魔法が使えるの私しかいなかったし」
「それもそうだな! ルンの言う通り、後方から攻撃が出来る魔法使いが欲しかったし!」
なんか少しずつ盛り上がっているようだけど……まあいいか。
「それじゃあ是非入らせてくれ、ユキ」
「やった!!! これから宜しくねアレン!」
「お、おう」
「じゃあ自己紹介するぞ! お互いの事を知っておかないとチームとして成長することが出来ないからな!」
「じゃあ私から、名前はルンだよ~。魔法で後方から攻撃するのが役割で、使えるレベルは第7級魔法~」
「俺の名前はゴウ! 剣術で前方の敵を切り伏せていくアタッカーだ! 宜しくな!」
「最後に、私はユキ! ゴウと同様、剣術を使って敵を切っていく剣士よ! 一応パーティーのリーダーをしてます!」
皆丁寧に自己紹介を俺にしてくれる。最初は雰囲気が悪そうなパーティーだと思ってしまったが、なかなか悪くなさそうじゃないか。
「俺の名前はアレンだ、魔法は独学でそこそこ使える。これから宜しくな」
そう言って皆自己紹介を終える。まさか俺が初日で冒険者のパーティーに入るなんて夢にも思わなかったが、まあ良いだろう。
「それじゃあアレン君のスケジュールを教えてもらえる? 冒険者の登録を済ませたいんだけど……」
「ああ、明日はちょっと用事があるから、明後日でも良いか?」
「了解! それじゃあ明後日の昼に王都の冒険者ギルドで集合で良い?」
「それでお願いします、ユキさん」
「おっけー! じゃあアレン! また明後日ね!」
「突然来なくなるとか駄目だよ~アレン~」
「また会うぞアレン!」
ユキ達は俺に釘を刺しながら、後ろを向き、宿屋に向かって行く。
「今日は……疲れたな」
俺は今日あった出来事を振り返りながら、邸宅へ足を進めていくのだった。