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未来を救うとは戦うだけではない

「宮野佑介と申します。この度は十番目の試練ゲート攻略おめでとうございます」


「ありがとうございます。かの有名な宮野佑介さんにお会いできて光栄です」


 検査も終わってレイジ以外は問題なしということで病院を離れてホテルに移動した。

 レイジは大事をとって入院となり、他のみんなはホテルに泊まることになった。


 終末教の襲撃にあったためにホテルの階を丸々一つ貸切にして覚醒者協会が護衛についてくれて、皆思い思いに部屋で休んでいた。

 そんな中でトモナリはホテルにある貸会議室に来ていた。


 そこにいたのはマサヨシと数名の覚醒者協会の人だった。

 トモナリが以前に会ったシノザキもいた。


 一人の男性が立ち上がってトモナリに手を差し出してきたのでトモナリは応えて握手を交わす。

 トモナリが握手をしたのは宮野佑介という人で正義の侍なんて呼ばれる高レベル覚醒者だった。


 覚醒者の強さをランクで分けた覚醒者ランクではS級で、覚醒者の強さをランキング付けした覚醒者ランキングでも名前が出てくる強者である。

 もちろんトモナリもミヤノのことは知っている。


 回帰前も人類のためにかなり後期まで戦い抜いていた人だった。


「アイゼンさんの言う通りになりましたね」


 トモナリが席につき、口を開いたのはシノザキだった。

 ヒカリはトモナリの膝の上に座って抱えられている。


「試練ゲートの攻略に……終末教の襲撃。全てアイゼンさんが事前に言ったようにことが進みました。残念ながら終末教の幹部は逃がしてしまいましたが……」


 トモナリは終末教の襲撃も分かっていた。

 未来なんて見れるわけがない。


 それなのに分かっていたのは回帰前でも同じようなことがあったからだ。

 レベルが低い状態でNo.10に入ると能力値が二倍になるということがわかって各国で争うようにNo.10を攻略し始めた。


 一度出てしまうと能力値が元に戻ってしまい二回目以降は能力値倍化の恩恵が受けられないことやレベル一桁だと攻略経験が浅くて攻略に失敗してしまったなんてことがありながらも最終的に攻略に成功したのは日本の攻略隊だった。

 喜ばしい出来事なのだが世の中に広まったニュースは悲しいものであったのだ。


 ニュースの見出しはNo.10の攻略隊壊滅。

 攻略を終えて出てきた覚醒者たちを終末教が襲撃し、ほとんどの人が倒されてしまったというものだった。


 No.10を攻略するような覚醒者は将来有望なので今のうちに潰しておこうということなのだ。

 今回も同じことが起こると思っていた。


 だからトモナリは最初から覚醒者協会を巻き込んだのである。

 No.10の攻略だけならマサヨシを説得することはできた。


 しかし終末教の対応までなるとアカデミーの人員だけで足りるか怪しいところだった。

 そこで覚醒者協会にも終末教に襲われる可能性があると話をして覚醒者を待機させてもらっていた。


 ゲート前に人を多く配置して未然に襲撃を防いでしまうと後々襲われる可能性がある。

 終末教を捕まえたり、終末教という存在の怖さを分からせるために戦う必要もあったので覚醒者協会には離れて待機してもらっていたのだ。


「十番目の試練ゲートを攻略し、終末教の襲撃からも無事でいられたのはアイゼンさんのおかげです。覚醒者協会を代表してお礼申し上げます」


「うまくいってよかったです」


「つきましてはアイゼンさんのパートナーであるヒカリさんに未来予知の力があると覚醒者協会は認定いたします。よろしければ今後未来を見た時にネットではなくぜひうちにうちにご連絡ください。それによって事故などを防げましたら報奨金もお支払いします」


「もちろんです」


 全てはトモナリの計画通りだった。

 ネットに未来の情報を書き込んだことから始まり、覚醒者協会に見つかりNo.10を攻略、終末教の襲撃を乗り切り、トモナリの名声を高めて未来視に一定の信頼を持たせた。


 最初から計画していたことだった。

 細かくはその時その時で修正しながら行動していたがおおよそ計画通りにことは進んだ。


 全ての事件を防ぐなんて無理である。

 ましてトモナリ一人の力ではほとんどのことに手が届かない。


 だが未来視という形で警告を促せば防げる事件もある。

 試練ゲートを攻略するだけじゃない。


 一般のゲートや覚醒者による事件など世の中には多くの出来事があった。

 その中で一人でも救うことができるのなら行動はすべきである。


「しばらくは周りが騒がしくなることもあるかもしれません。何ありましたら覚醒者協会にご連絡ください」


 これで今後覚醒者協会という大きな組織に影響を及ぼすことが可能となった。


「ヒカリさんもありがとうございます」


「うむ、頑張ったんだぞ」


 膝の上に乗るヒカリもえっへんと胸を張る。


「……君はこの先の進路は決まっているのかい?」


 ミヤノは落ち着いた様子のトモナリに感心していた。

 自分が高校生ぐらいの時は不真面目な生徒ではなかったにしろここまで大人びていなかったと思う。


「いえ、まだ正確なことは何も」


「行きたいギルドや声をかけてきているところは?」


「まだ何も考えていませんしお声をかけていただいたこともありません」


 トモナリほどの能力値ならどうにかして声をかけてくるギルドや企業もあるかもしれない。

 しかし今のところは何もない。


 それはマサヨシが全てシャットアウトしているからだった。

 せいぜい課外活動部の先輩であるカエデのオウルグループに目をつけられている可能性がありそうだというぐらいである。


「大和ギルドに興味はないか?」


 ミヤノは今覚醒者協会側の人としてここにいるけれど、本来は覚醒者協会の人ではなかった。

 覚醒者協会と連携している大和ギルドという大きなギルドのリーダーである人だった。


「ミヤノさん、このような場で声をかけるのはやめていただきたい」


「……おっと、申し訳ありません」


 マサヨシが目を細めてミヤノを止める。

 流石に関係のない場でトモナリに誘いをかけるのは色々とマナー違反である。


「まあ候補の一つに考えておいてくれ。僕は大歓迎だ」


「……ありがとうございます」


 未来においても活躍すること間違いなしのミヤノのところなら悪くはなさそうだとトモナリは思う。

 だが今すぐ答えを出す必要もない。


「これは僕の連絡先だ。困ったことがあれば僕も動くよ」


 ミヤノはトモナリの前に名刺を置いてウィンクする。

 意外な人と意外な関係が築けた。


 これは儲け物だなとトモナリは思ったのだった。

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