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人類の敵2

「うおおおおっ、やったじゃないか!」


 タケルが雄叫びを上げるように称賛の言葉を発すると他の二、三年生たちもNo.10攻略を喜んだ。

 同時にトモナリたちの後ろのNo.10ゲートが小さくなってきて消えた。


 中の人が誰もいなくなったので時間を待たずして消失したのである。


「攻略おめでとうございます! ゲートについてのお話を聞かせていただいてもよろしくですか?」


「それは後にしなさい」


 覚醒者協会の職員がトモナリたちに話を聞こうと駆け寄ってきてマサヨシがブロックする。

 ゲートの情報を聞きたいという気持ちは理解するけれど今はトモナリたちの体調を確認して休ませることが大事である。


 話を聞くことは後日だってできるのだ。


「で、ではせめて攻略隊の公表のために写真でも……ひっ! な、なに……矢?」


 トモナリが急に剣を抜いて振ったので職員はびくりと身構えた。

 ゲートを攻略して疲れているのも分かるがそこまで怒らなくともと思ったら地面に何かが落ちた。


 それはトモナリによって真っ二つに切り裂かれた矢であった。


「学長!」


「……来たか。みんな、戦闘準備だ!」


 矢なんてどこから飛んできたのかと考える前にトモナリとマサヨシが動く。

 マサヨシが手を振ると周りが魔力で作られたシールドに囲まれ、直後にシールドに魔法や矢がぶつかった。


「な、なんだ!?」


 二、三年生や覚醒者協会の職員が動揺する中でミズキたち一年生は武器を構えてまとまっている。


「正しき終末に抵抗する罪深き者よ! 迎えるべき運命に抗い、世に苦痛をもたらすことは神の意思に反することである! 新たなる世界への扉は正しき終末によりもたらされるのだ!」


 ゲートを囲む鉄の壁の入り口に同じデザインのローブを来た連中が立っていた。


「あれは……」


「終末教です!」


「あれが終末教だと!?」


 ローブの胸には終末というところから着想を得て七本のラッパが円を描き、真ん中には新たな世界を意味すると開かれた扉がデザインされていた。

 危険すぎて本人たちしか使うことがない終末教のエンブレムである。


 高らかに妄言を垂れ流す先頭の男は顔を上半分覆う仮面をつけている。


「早く武器を!」


 ここで流石なのは三年生である。

 とりあえず置いてあった武器を手に取り終末教を睨みつける。


「やれ!」


 仮面の男が指示を出すと終末教が一気に動き出す。


「ふっ!」


「グァッ!」


「そうはさせぬぞ!」


 マサヨシが一番前を走ってくる終末教を殴り飛ばした。

 吹き飛ばされた終末教は鉄の壁に叩きつけられて動かなくなる。


「鬼頭正義……正しき終末を邪魔する悪魔の使徒を生み出す罪人」


「正しき終末などない。くだらぬ妄想に駆られ多くの人に被害をもたらすお前たちの方が悪魔と呼ぶにふさわしい」


「ふっ、99個ものゲートを攻略とでも? できないことを考えるのではなくいかに良く終末を迎えるかが大切なのだ」


「貴様らとは会話にならんな」


「理解をしようともしていないのだから当然だろう。正しき終末を迎えることを理解するのが怖いのだろう?」


「貴様らこそ99個の試練ゲートを攻略することから逃げた臆病者だ」


「なんとでも言え。鬼頭正義、お前の相手は私がしよう」


 仮面の男が剣を抜き、マサヨシも同じく剣を構える。


「サードナイトにやられた傷は回復したのか?」


「試してみるといい!」


 マサヨシと仮面の男が戦い始める。


「トモナリ君……」


「みんな戦うんだ!」


 終末教は戦うマサヨシと仮面の男の横を抜けてトモナリたちの方に迫ってくる。

 イリヤマたち教師も数人いるが十数人いる終末教を教師だけで対応することは難しい。


 どうしてもトモナリたちで対応しなければならない相手が出てきてしまう。

 それでも一年に二、三年生と教師の方を加えた人数の方がやや多い。


「アイゼンさん!」


「俺も戦います!」


 戦い始めた教師たちに混ざってトモナリも終末教を切りつける。


「くっ!」


 トモナリが加わっても全ての終末教は防ぎきれない。

 流れていった終末教の攻撃を防いでユウトが顔をしかめる。


 終末教の方がレベルが高いのか防いだ手が痺れる。


「モンスターと同じくチーム単位で戦うんだ!」


 個別に戦っては負けてしまう。

 人数差を活かし、連携を取ることで格上の相手とも渡り合える。


「うっ……うあっ!」


「ウラヤス先輩!」


 課外活動部での顔合わせの時にトモナリと手合わせしたこともある浦安零次が終末教の男に肩を切られて後ろに倒れる。

 隙を見つけたのに攻撃することをためらってしまい、逆に反撃を受けたのだ。


「ヒカリ!」


「任せろー!」


 ジッと様子をうかがっていたヒカリが動く。


「ぎゃああっ!」


 ヒカリはレイジにトドメを刺そうとしている終末教に飛びかかって顔面を爪で切りつける。

 オークにも通じる爪攻撃なのだ、まともに切りつけられるとかなり痛いだろうと思う。


「怯むな、戦え! 抵抗しなきゃやられるのは自分や仲間だぞ!」


 トモナリが叱責を飛ばす。

 襲われるからみんな対応して防御しているものの人を攻撃するということにためらいがある。


 けれどもレイジを見れば分かるように終末教は命を狙って攻撃してきている。

 反撃して倒さねば防御のみではいつかやられてしまう。


「ふっ!」


「グアっ!」


「私を倒そうなんざ、100年早いよ!」


「この女……」


 素早く状況に適応している人も何人かいる。

 三年のフウカや二年のカエデは終末教を切り倒していた。

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