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十番目の試練ゲート7

「まあ時々なら勝負受けてやるから。みんな、あの光の柱が二階への入り口だ。あそこまで移動するぞ」


 トモナリは落ちていた魔石を拾い上げて光の柱の方へと移動した。


「おお……」


 光の柱の下には大きな扉があった。

 トモナリたちが扉に近づくと光が消えて不自然にたたずむ扉だけが残されている。


「まずはレベルをチェックしよう」


 二階に行く前に準備は必要である。

 レベルを確認がてらみんなの状態のチェックを行う。


 レベルも攻撃の参加状況やトドメを刺した人などで変わってくる。

 できるだけ平等になるように順番に役割を回して討伐していたけれど差はどうしても出てしまう。


「14か。思ってたよりも伸びたな」


 トモナリのレベルは14になっていた。

 2〜3レベル上がればいいと思っていた。


 入った時レベルは9だったので5も上がったことになる。

 かなり良い方だと言ってもいい。


 トモナリの能力値の上がり方は今のところ一つのレベルにつき各2ずつ上がっている。

 さらにゲートの恩恵で倍上がっているのだから後々に及ぼす効果は大きい。


 みんなのレベルも同じようなものだった。

 コウだけは14に達していて他のみんなは13レベルであった。


「二階に行くのだ?」


「いや、今日はここで寝よう」


「ええっ!?」


 まだまだいけると思っていたミズキは驚きの表情を浮かべる。


「気持ちは分かるが外ではもう七時。夜だ」


 トモナリが時計を見せる。

 今現在の時刻は七時を少し回ったところだった。


 朝の七時ではなく夜の七時である。


「もうそんな時間なんだ……」


「全然わからないね」


 みんなも意外と遅い時間になっていることに驚いている。

 ゲート内は明るく時間の感覚が狂う。


 その上戦っているとさらに時間の感覚はなくなるし、戦うことによって興奮したりすると体の疲れというものも分からなくなる。

 今みんなはオークを倒しレベルアップした高揚感でまだまだ余裕であると感じているが、実際には朝から戦い通しで疲労が蓄積している。


 熟練した覚醒者ほど単純な今の感覚だけを信じず体の状態を確認する。

 疲労が蓄積した体で本来休むべき時間に動いていると無理をした反動に襲われる可能性がある。


 夜ならば寝るべき。

 疲労も解消できるし戦いの高揚感が落ち着いて頭も冷静になれる。


「テント張るぞ」


 トモナリは荷物をインベントリから取り出す。

 泊まることも想定してテントも持ってきている。


 荷物はデカくなったけれどもどうせゲート前に置いておくし、インベントリが解放されたらインベントリに入れておけばいいと考えていた。

 男子用、女子用でそれぞれ一つテントを張った。


 それから食材を切る。

 鍋に食材を入れて持ってきていたガスコンロにかける。


 それなりに人数がいればこうして荷物を分散して持って来れるのでありがたい。


「なんか林間学校とかそんなんみたいだよね」


「そんな感じある」


 ミズキの言葉にサーシャが頷く。

 ゲートの中なのであるがすでに一階のモンスターは全滅していることは分かっている。


 テントを張ってみんなで料理の準備をしてと楽しくて、そうした学校の行事のようだと思うのだ。


「どうだ? 煮えてきたか?」


「んー、もうちょっとかな?」


「お腹空いたぞ!」


「ヒカリちゃん、もうちょっと我慢」


「むむ……お菓子食べて待つのだ!」


「ご飯前はダメ」


「サーシャ厳しいのだぁ〜」


 トモナリもそんな和気藹々とした雰囲気を咎めるつもりはない。

 油断するのはいけないがいつも気を張り詰めていてはダメになってしまうのでほどほどに気を抜くのは良いことだ。


 ヒカリなんかゆるゆるに見えるけれど実際何かが近づけば真っ先に気づいてくれる。

 緩やかさもあるし鋭さもあるのだ、とトモナリは思っている。


「そっちは?」


「こっちもいい感じだよ」


 もう一つのコンロの方ではご飯を炊いていた。

 それぞれ役割分担して料理を進める。


「かんせー!」


「やったのだ!」


 トモナリが全体を見ながらミスなく料理を作り上げた。

 今回作ったのはカレーライスである。


 お弁当を持ってきてもよかったのだけど温かいものというのはそれだけでも過酷な状況において美味いものである。


「うん、美味いな」


 みんなで丸く集まってカレーを食べる。

 カレーもご飯も上手くできている。


「……眠いか?」


「あ、ごめん……」


「いいんだ。1日ゲートを攻略した興奮していた頭が落ち着いて疲労を認識し始めたんだ」


「うん……やっぱり疲れてるかな」


 カレーを食べていたマコトがぼんやりとしていることにトモナリは気づいた。

 お腹も満たされて一通り落ち着いてきて疲れが出てきたのだ。


 当然のことで責めるつもりなんてない。


「確かになんだか眠くなってきたな」


 ユウトはあくびをしながら体を伸ばす。

 まだ戦える。


 そんな風に思っていたのに料理を作って休むと体が急に重たく思えてきた。


「疲れたら甘いものだぞ」


 デザート代わりにヒカリがチョコをマコトに渡した。


「片付けをしたら休もう。モンスターはいないと思うけど念のため交代で見張りをするんだ」


 カレーもライスもヒカリが食べきってくれたので捨てるようなことにならなかった。


「水の魔法使えるんだ」


「便利だからな」


「てっきり火の魔法専門かと思ってたよ」


「なんでも使えて損はない。ヒカリが火だから俺は別属性ってことも考えてるんだ」


 トモナリとコウで魔法で水を出して皿や鍋を洗う。

 コウはトモナリが水の魔法を使えることに驚いていたけれど魔法は魔法使いしか使えないものじゃない。


 トモナリは魔法職ではないけれど魔力は高いので魔法を練習してもいいぐらいの能力値がある。

 トモナリは色々な属性をちょっとずつ扱えるオールラウンダーだった。


 火は暖を取ったりすることができるし水はこんな細かなことにも使うことができる。

 魔法で戦うというより攻略を便利にする目的の方が今は大きかった。


「それじゃあ僕は先に寝るよ」


「ああ、お休み」


 トモナリは見張りのためにそのままテントの外に留まる。

 みんなの雰囲気は夜であるが空を見上げると明るく、とても奇妙な感覚になる。

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