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第61話 竜人族の少女

 警鐘から少し遅れて拡声魔法によるアナウンスが始まる。


『ユーザニア市北部の山岳に竜種の接近を確認しました。市民は屋内へ避難を、市兵は各所へ配置について最大級の警戒をとれ!』


 ユーザニア市が竜種による強襲の可能性があるらしい。私達なら強襲を防ぐことが出来るかも知れない。とりあえず状況を確認する為に、ユーザニア市にある冒険者ギルドへと向かった。


 私達が冒険者ギルドに到着すると、ギルド内は既に大混乱の状態になっていた。ギルドマスターとユーザニア市兵の隊長が竜種の対応に付いて話し合っているが、竜種が相手では冒険者と市兵を合わせた戦力でも、全く太刀打ちが出来ないみたいなの。王国軍が控えている要塞都市から救援を待つにしても、その間に竜種から受ける被害は甚大になるのは確実なので、打つ手がないので大混乱してるんだね。


 私はそんな大混乱の中、騒いでるギルドマスターの前まで近付いて声を掛けた。


「あの〜、竜種討伐の依頼が出てるのなら依頼を受けますけど、緊急討伐のクエストは出てないんですか? 無いなら適当に竜種を討伐しちゃうけど」

「おい、この状況で冗談を言うな! 俺達は必死に対応策を考えてるんだよ!」

「えっ、私は冗談を言ってないんだけど? 信じてくれないみたいだから、勝手に山岳へ向かって竜種を討伐してくるね〜」

「寝言は寝て言え! 邪魔をするなら出て行け!」


 竜種くらいで勝手に混乱してる奴は放っておいて、急がないと竜種がユーザニア市内に来てしまうかも知れないので、竜種を討伐する為に山岳へと急いで向かったの。


 山岳の手前までゼシカとアナを連れて到着すると、赤い鱗で身を包んでいる火竜フレイムドレイク3体が何かに向かって攻撃を仕掛けようとしていた。


 私がゼシカに指示して水魔法で牽制をしてもらい、私が攻撃を向けられていた何かに近づいた。そこには紫色の小さな仔竜がギズを負って倒れていた。傷はかなり深いようで瀕死の状態みたいなので、私は〚全回復フルリカバリー〛を唱えて完全回復させると、アナに声を掛けて小さな仔竜を連れてその場から離れた。


「私はゼシカの加勢をするから、この仔を見守ってあげてね」

「かしこまりました」


 仔竜はアナに任せて、私は急いでゼシカの元へ行くと、手傷を負いながらもギリギリで交戦してくれていた。


「ゼシカ、よく頑張ったね。後は私に任せて!アナの元に向かって待機しててね」

「アリス様、1体も倒せず申し訳ございません……ご武運を……」

「うん、ありがとう」


 さぁ、ゼシカに傷を負わせた火竜フレイムドレイク達には、しっかりと命を以って償ってもらうことにする。私は複合魔法の〚爆裂砲バーストキャノン〛を放つと、爆裂弾が1体の火竜フレイムドレイクに命中して弾け飛んだの。次は〚光纏〛を発動させてから、双剣を構えて火竜フレイムドレイクの首へ斬り掛かって首を刎ねる。残り1体がその隙をついて炎のブレスを吐いてきた!


『グバァーーーー』

「そんなモノは効かないよ〚水の盾ウォーターシールド〛からの〚落雷ライトニング〛!」


 水の盾を発動させて火竜フレイムドレイクのブレスを相殺してから、火竜フレイムドレイクの頭に落雷を落とす。雷に撃ち抜かれた火竜フレイムドレイクは地面に崩れ落ちて竜種の討伐は終了したの。


 火竜フレイムドレイク達を倒してからゼシカとアナの元へ向うと、気絶していた仔竜が目を覚ましたの。


「私は生きてる! 貴方が助けれくれたの?」


 なんと、仔竜は言葉を話すことが出来るみたい。拒絶の森の竜種たちも言葉を話していたのを思い出した。コミュニケーションが取れるのはありがたいね。


「そうだよ。君はかなり深い傷を負っていたけど、治療が間に合って良かったよ。どうして同族に襲われていたの?」

「いえ、同族ではありません。私は竜人で竜と人の血が混ざった穢れた者です……」

「はぁ〜、血が混ざると穢れるとか馬鹿馬鹿しいよね。互いの良い所を受け継いだ、優れた者だと思えないのかな? 君は竜人なら容姿は変えれるのかな?」

「出来ますが……今は身を護る為に竜になったので、1日はこの姿のままになります」

「そうなのね。それで君は戻る場所はあるのかな? あるならそこまで送り届けるよ」

「先程、火竜フレイムドレイク達に襲われて母を亡くしました。私に家族はもう居ません……」

「ごめんね。辛いことを聞いたね……もし君が良ければだけど私達の元へ来ない? 何かと訳ありな3人で暮らしてるから気にしなくても良いよ。あっ、取り敢えず自己紹介をするね。私はアリスだよ」

「私はリューネブルック。リューネと呼んでください。どうか私をアリス様の元へ置いてください」

「私はゼシカよ。あなたもアリス様の従者として共に励みましょう!」

「私はアナだよ。アリス様は素晴らしい主なのです。何も心配する必要はないからね」


 結局、リューネも私との主従契約を望んだので、主従刻印紋を付けて3人目の従者として迎えたの。

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