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第51話 ユーザニア市への護衛①

 セルラー子爵家の令嬢ミネバ様を、ユーザニア市へ届ける護衛任務の日がやってきたの。


 私達がセルラー子爵邸へと到着すると、既に門前にセバスチャンが待機していた。他にもセルラー子爵家の紋章が付いた馬車と御者と思われる者が2人と、ミネバ様の身の回りの世話をするメイドが1人が待機していた。


「お待たせ致しました。光の絆のアリスです。ユーザニア市への護衛についてお任せください」


 私がセバスチャンに挨拶をすると、4人は一斉に頭を下げてからセバスチャンが代表して返事をした。


「アリス様、ミネバお嬢様のユーザニアへの護衛をよろしくお願いします。私は同行致しませんが、御者のガンツとベイリーに、お嬢様専属メイドのケイトの3名が同行致します」

「かしこまりました。馬車の操縦席には私が前方を、後部席にはゼシカとアナが馬車後方の警戒に当たりますのでご安心下さい」

「実に頼もしいですね。間もなくミネバお嬢様が参りましたら出発致しましょう」

「「かしこまりました」」


 セバスチャンとの会話が終わって暫くすると、屋敷からセルラー子爵夫妻とミネバお嬢様が出てこられたの。


「アリス、私の護衛をよろしく頼みます」

「はい、ミネバお嬢様の身の安全な馬車旅をお約束します」


 ミネバが上品に言葉を心がけ、安全な馬車旅を約束すると、伯爵夫人から改めてミネバの安全を頼まれた。


「アリス、ミネバのことを頼みますよ。末娘で少し過保護に育てたので、我儘を言うかも知れませんがよろしく頼みますね」

「はい、お任せ下さい。それではユーザニア市出発致します!」


 ガンツの手綱で馬車が動き出す。


 子爵邸から村の大通りから門を通って、ユーザニア市のある西へ向かって移動を開始。村を出たところでガンツが、ユーザニア市への道中について簡単に説明した。


「草原では魔物は殆どが現れませんが、草原を抜けてから渓谷を通るんですが、その辺りから魔物の出現が多くてかなり危険なんですよ」

「私が常に馬車の周囲1km程度は気配感知をしているので、魔物に急襲されることはないので安心してね」

「はい、判りました」


 初日は草原地帯の移動のみ。


 街道を進み食事休憩をとる。食事は別々の契約だったんだけど、私が妖精の鞄フェアリーポーチから『ホカホカ』な料理を出して食べてる様子を見ていたミネバから、別料金を払うから食事を分けて欲しいと言われ、同行者全員で食事をすることになった。


「アリス、とっても凄いですわ! 10日間の馬車旅ともなると、貴族でも冷めた物しか食べることができませんのよ!」


 大興奮にミネバに温かご飯の説明をする。


「この妖精の鞄フェアリーポーチはマジックアイテムなので、物がいっぱい入るのと時間停止の機能があるので、長期間の移動ではとても役立つんですよ」

「そうなの! マジックアイテムってとても便利な物なのね」


 夕食を済ませるとミネバが馬車に戻ろうとしたので、私達の妖精のテントで寝ないか聞いてみる。


「ミネバ様は馬車で寝られるんですか?」

「そうね、毛布をかけて寝るわよ」

「えっと、ミネバ様だけなら私達のテントで寝ることが可能なので、よろしければ一緒にテントのベッドで横になって寝ませんか? 馬車よりも遥かに寝やすいかと思いますし、一応は風呂もあるので湯浴みもできますよ」

「えっ? テントの中にお風呂とベッド?」


 テントの中にお風呂とベッドがあると聞いて、ミネバは貴族とは思えない大きな声であげたの。


「はい、テントもマジックアイテムなので、見た目は小さいテントなんですが、中は結構広いんですよ。ご覧になりますか?」

「えぇ、是非見てみたいですわ」


 ミネバとケイトがテントの中を覗くと、想像以上のテントの広さとその豪華さに目が点になっていたの。


「アリス、是非テントで寝かせて欲しいわ」

「かしこまりました。着替えと湯浴みは1人でできますか?」

「上級貴族じゃないから問題ないわ。ケイト、私の着替えを持ってきて」

「かしこまりました」


 その後は湯浴みを済ませて、『ふかふか』ベッドを堪能しながら就寝したの。

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