自己紹介が終わる。次は武術の授業なので、更衣室で動ける服装に着替えたんだけど……、私が身に着けているこの服は、武術の授業に相応しい物なのかな?
私の隣に居るサンドラを見ると、タイトなシャツとパンツで動きやすさ重視の服装なのだ。それに対して私の服はというと、スカート丈が制服より長くなっただけで、どう見ても武術をする服装には全く見えなかった。
「ねぇ、サンドラ? これって服を間違ってないかしら?」
「いいえ、奥方様が用意された物ですよ。姫様によくお似合いです」
何かの間違いかと思ってサンドラに確認をしてみたけど、お母様が用意した服で間違いなかった。サンドラが身に着けているタイトな服は、スタイルに自信がないので避けたい気はする。だけど、武術でスカートというのはどうだろう?
「だって、激しく動いたらスカートがめくれるんじゃないかしら?」
「パニエを履かれているので下着が見える心配はございませんよ」
「う、うん……」
サンドラの『大丈夫』の言葉を信じて、授業が行われる演習場へと足を運んだ。
演習場に着くと、そこには10人以上の生徒が居て、他のクラスと合同で武術の授業が行われるのだと判った。ただでさえ悪目立ちしそうな服装なのに、他のクラスの生徒にまで見られると、私の悪い噂が一気に広まってしまうと気が重くなった……。
(この姿だと、普通に我儘令嬢だよね……)
そんな私の気持ちなんて全く理解してない叔母様が、笑顔を見せながら私の元へ歩み寄ってきた。
「リディ、凄く似合っているよ! 授業はAクラスも居るみたいだけど、あんなゴミ共は気にする必要はない」
「ははっ、そんな酷いことを言っちゃダメだよ? でも、本当にこの服で大丈夫なのかな?」
「問題ない。さぁ、授業を始めるよ」
叔母様がAクラスに対して酷いことを口にすると、Aクラス担任のランベルトや生徒から厳しい目を向けられる。その中には第二王子ガウェイン殿下やリリアも含まれていた。
少し険悪なムードの中、叔母様の元にSクラスの生徒が集まり授業が始まるのかと思ったら、Aクラスの担任ランベルトが声をかけてきた。
「レイバック女史、我々Aクラスのことをゴミと言ったことに抗議する」
「ん? ゴミではなくクズと言えば良かったのか?」
「なっ、辺境伯家が根回しをしたことで、無能な我儘令嬢とその従者をSクラスにしたのは判ってるんだぞ!」
「ほぅ、辺境伯家を愚弄するか。では根回しが事実か確かめる為に、辺境伯領の生徒とAクラスの生徒で模擬戦でもするか?」
「良いでしょう。模擬戦で勝った生徒がSクラスになるということで宜しいのかな?」
「構わん。あぁ、それだけでは面白みがないな。Sクラスが全勝した時はお前は教師を辞め、逆に全勝できなければ私が教師を辞めるという賭けをしないか?」
「ふふっ、良いでしょう! 後で後悔しても知らんからな!」
「ふっ、お前がな」
教師同士の煽り合いにより、武術の授業が模擬戦になった。しかも結果次第で、どちらかが教師を辞めるなんてことになったのだった。