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巻き戻り令嬢は努力する
巻き戻り令嬢は努力する
小桃
異世界ファンタジー内政・領地経営
2025年02月08日
公開日
9.1万字
完結済
 私はリディアーヌ.レイバック。
 
 ファーガソン王国にあるレイバック辺境伯家の一人娘に生まれ、本当なら何不自由ない生活を送れる筈だった。でも実際の私は誰からも相手にされない【嫌われ令嬢】だった。

 武の名門に生まれるも、才能の欠片もなくわがまま放題のバカ娘だった。そんな私がレイバック家を継ぐことは無理だと判断した両親は、私が5歳の時に見限って、義弟となるファビオを迎えた。

 無類の天才だったファビオに嫉妬した私は歪みきった。家の権威を振りかざしては、周りの者を攻撃して憂さ晴らしをしたことで、すべての人から嫌われたのだった。

 私には第二王子の婚約者が居たが、私の目に余る行動に嫌気がさしたのか、別の令嬢に恋をして婚約解消を訴えたが拒否をした。私はその令嬢を徹底的に攻撃をした事で、王子の怒りをかってしまい、暗部によって暗殺されたはずだった。

 そのはずだった。それなのに気付けば5歳の子供の頃に逆戻りして、もう一度リディアーヌ.レイバックとしての人生をやり直す事となったのだった。

嵌められた令嬢

「はぁ、はぁっ、姉さん、ごめんね」

「ファビオ!私なんかの為に……」

「姉さんの為だからだよ。ごめん……」


 何度も謝りながら義弟のファビオは息を引き取った。天才と呼ばれた義弟に嫉妬して、辛く当たってばかりだった。そんな私なんかの為に、ファビオはその生涯を終えたの。


「ファビオ、私なんかの為に……、もし、あの世というものがあって再開する事ができたなら、心からの謝罪するから許してね」


 動かなくなった義弟を抱きしめ涙を流していると、私の元へ暗部の者と共に第二王子のガウェイン殿下がやってきた。キラキラとした金髪に、透き通るような青い瞳をした殿下が私達の元へ歩み寄る。


「流石はファビオと言ったところだったが、この無能なクズ女を守っていたおかげで、葬ることができた。初めてお前に感謝したぞリディアーヌ!」


『ゴッ!』


「あぅ……」


 無能と罵られたあと、殿下に頭を踏みつけられると、痛みのあまりに声が漏れた。そして、ガウェイン殿下が周りに目線で合図を送ると、暗部の者が私の髪を掴んで立ち上がらせた。すると殿下の背後から剣を手にした一人の女性が現れて、ゆっくりと私の元へ歩み寄ってきた瞬間『ザクッ』っと胸に衝撃が走り、その場に崩れ落ちる。


「かはっ……」


 女性の剣で胸を突かれたことにより、激しい痛みで声が漏れると、その女性は薄っすらと笑顔を見せながら、私に向けて言葉を言い放ったのだ。


「あはっ、惨めな最後ね」


 桃色の長い髪と同じ桃色瞳をした女性は、『ニタリ』と笑いながら私のことを見下していた。


「……」


 左胸を剣で突かれたことで、もはや声をあげることもできずに視界が霞んでくる。ガウェイン殿下は女性を抱き寄せながら私に声をかけた。


「ははっ、邪魔なお前を排除できたよ。これでリリアとの明るい未来が手に入る。お前が婚約破棄を受け入れていれば、このような結果にならなかったのにな!本当に無能で馬鹿な奴だ。あ~はっはぁ~!」


 殿下は高笑いしながら、私との婚約を破棄にして、結ばれる事を望んだ想い人リリア.ランベルト男爵令嬢と口づけをする。


 豪商だった父親が、多額の金銭を献上したことで男爵位を買った成金貴族の娘だ。貴族らしからぬ天真爛漫な振る舞いに心を奪われ恋に落ちた。私は辺境伯家の権力を行使して様々な嫌がらせをしたが、真実の愛には勝てずに、結局は暗殺されるハメになったのだった。


「……」


 目の前で横たわるファビオに視線を向けながら、私の視界が徐々に暗くなっていくなか語りかけたの。


「ファビオ……私も逝くわ」


 私より先に逝ったファビオに想いを伝えると、私の視界は完全に真っ暗になり、リディアーヌ.レイバックは17年の生涯を終えたのだった。


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