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第20話 王の帰還。

 結局、倉庫街をドラゴンが破壊した件は「裁定者が犯罪者を捕らえる為に行った事」として、お咎めなしだった。


 俺やプランダーが一件に関わった事が公(おおやけ)になった場合、犯罪者の疑いがかかる。その為俺たちの活躍は闇に葬られた。


「せっかく命がけで戦ったのになぁ」


 そう言って肩を落とすのはプランダーである。ドラゴンと戦ったとなればそれなりに名誉な事。ガッカリするのも無理はない。


 ここは王都リーファスの南門。時は早朝。結局一泊した俺とノーティアス、そしてフェイトの三人は、これからドノナストへ出発する。プランダーは見送りに見てくれたのだ。


「そうガッカリするなよプランダー。君の勇気とそのチートスキルがあれば、きっともっと活躍出来るさ。それとな、仲間を探して一緒に冒険した方が、きっと楽しいし強敵も倒せると思うぞ」


「それもそうっすね。ソロでやるのにもそろそろ限界感じてきたっす。これから冒険者ギルドに行って、仲間探してみますよ」


「ああ、それがいい」


 なんて事を話してる間。ノーティアスとフェイトはずっと口論している。


「だから、なんでフェイト様まで一緒に来るんですか?」


「さっきから何度も説明しておるじゃろうが。ワシが兄上の妹だからじゃ!」


「本当の兄妹じゃないでしょ! それに裁定者の仕事はどうするんですか!」


「どこまでも見渡せる【千里眼】の力で犯罪者はいつでも見つけられるわい。ワシは瞬間移動も出来るしのう。兄上と一緒にいる事は、何のデメリットにもならぬわ」


「でも、でもでも! ダーザイン様にくっつき過ぎです! 離れて下さい!」


「うるさいのう。妹なんじゃからいいじゃろう」


 そんなやりとりを、羨ましそうに見つめるプランダー。


「いいなぁ。俺も女の子にチヤホヤされたいっす」


「きっといずれそうなるさ。それじゃ、俺たちは行く。またな、プランダー!」


「はい! 気をつけて!」


 手を振るプランダーに手を振りかえし、俺は馬を引きながら門をくぐる。


「お帰りですか? お気をつけて。おや、お連れ様が増えたのですね」


「ええ、新しい仲間です。クルーゲンさん、親切な対応ありがとうございました。ではまた」


 番兵のクルーゲンさんと挨拶を交わし、外へ出る。


「さて、ではドノナストの王都ストーリアに向かうぞよ。兄上、本当にカシム王に謁見しなくて良いのか?」


 当然のように仕切り始めるフェイト。


「ああ、本当は一泊する予定じゃなかったんだ。きっとみんな俺たちの帰還を待ち侘びている筈だ。それに同盟を結ぶのは、ドノナストがもっと発展してからでいい。取引材料を増やす必要がある」


「それもそうじゃのう。よし、では出発する。兄上、ノーティアス。馬の鞍に手を乗せるのじゃ」


 俺とノーティアスは言われた通りにする。フェイトのやろうとしている事は既に察しが付いていた。ミナが行ったハンカチでの瞬間移動。あれと同じ事をしようとしているのだ。


「乗せたぞ」


「乗せました」


「うむ。では行くぞ!」


 フェイトが指を鳴らす。すると景色が一瞬で変わる。俺たちはドノナストの王都、ストーリアの前に移動していた。もちろん愛馬スラストも一緒だ。


 ストーリアには外壁がないが門番は居る。門番は国家兵団の団員が担っている。つまり元オークの男性エルフ達だ。


「おかえりなさいませ陛下! そのお方はどなたですか?」


 ここは西門。四人いる番兵の一人、スミシーが俺に気づいて声をかけてきた。そしてフェイトを見て目を輝かせている。まぁフェイトは性格に難ありだが、容姿は完璧な美少女だ。彼がときめくのも無理もない。


「ルーデウスから招いた裁定者のフェイトだ。彼女は人間の王やドワーフの王にも顔が効くのでな、俺の後見人になってもらった。今後は他国との貿易交渉にも協力してもらい、ドノナストの法律についての相談や、犯罪の取り締まりも行なってくれる。この国においては、俺と並ぶ地位の人物だと思っていい」


「なんと! そんな凄いお方でしたか! では早速歓迎の宴を開催致しましょう!」


「ああ、すまないが頼む。俺達は王城に戻るから、準備が出来たら声をかけてくれ」


「ハッ! かしこまりました!」


 四人の番兵に見送られ、王都内へと入る。王城に向かって歩く道中、フェイトは興味深そうに周囲を観察していた。


「ふむふむ。作りは悪くないのう。むしろ自然を生かしていて好感が持てる。あと足りないのは石畳と外壁くらいか」


「ああ、そうなんだ。採用するべきか悩んでいた。やはり必要だと思うか?」


「まぁ外壁は確実に必要じゃろうな。モンスターはいつ何時(なんどき)襲ってくるか分からん。いくらエルフ達が兄上の加護を受けて強くなっているとはいえ、寝込みを襲われたらお陀仏じゃろう。備えあれば憂(うれい)なしじゃ。石畳に関しては景観もさらに良くなるし、雨が降った時の事を考えれば、やはり舗装しておった方が良い。導入をお勧めするぞ」


「やっぱりそうか......リーファスの建築ギルドで職人を雇うべきだったな」


 俺は自分のミスを嘆いた。だがフェイトはニヤリと笑う。


「いや、必要ない。ワシがエルフ達に指導してやろう。任せておけ」


「本当か!? 助かるよ」


「他ならぬ兄上の為じゃ。大船に乗ったつもりでいるが良い」


「ありがとう。じゃあ頼む」


「うむ!」


 フェイトはエッヘンと薄い胸を張る。こういう所は本当に可愛い。ああ、それに......昨日の夜は、本当に可愛かった。ベッドの上で、俺は散々フェイトをわからせてやったのだ。生意気な妹を演じるフェイトは俺を雑魚と罵り、俺は彼女に兄として躾(しつけ)をしたのである。クッ、思い出したら股間が......!


「ダーザイン様、ヨダレが垂れてますよ」


「ジュルッ、すまん!」


 ノーティアスがクスクスと笑いながら俺を見る。俺は慌てて口を拭った。


「ふふっ、それにしても昨晩は楽しかったですね。僕、あんなにサイズの小さな服を着たのは初めてです。胸がはみ出してしまって、ちょっと恥ずかしかったですけど......ダーザイン様に喜んで貰えて良かったです。それにフェイト様と一緒に妹役をするのも楽しかったですし。あ、そうだ。これからずっと、『お兄ちゃん』って呼んでも良いですか?」


「ん? ああ、構わないぞ......」


 俺は昨晩のノーティアスとのやりとりを思い出し、前屈みになった。


「王様なのに、みんなの前でそんなになっちゃって......イケナイお兄ちゃんだね」


 ノーティアスがそう言いながら、俺の耳にフーッと息を吹きかける。背筋がゾクゾクする。


「これこれノーティアス。あまり兄上をいじめるでないよ。こんな往来では兄上もワシらに手が出せぬ。どうせなら人目のないところでいじめた方が、兄上の反撃を楽しめると言うもの」


「クスッ。それもそうだねフェイト姉(ねぇ)」


 ノーティアスはフェイトの妹という設定だ。見た目は完全にフェイトの方がお子ちゃまなのだが......そのギャップがまた良いのだ。人間とエルフが兄妹って設定はちょいと無理あるけど、まぁ楽しいから良しとする。


 そんな調子で時々からかったり、逆にからかわれたりしつつ、俺たちは王城へと到着した。スラストを馬の世話人に預け、城の中へ入る。


 エントランスでは母さんとナディアが出迎えてくれた。


「おかえりなさいダー君! ああ! 私の可愛い坊や! そして愛しい旦那様!」


「陛下! 一日千秋の想いでお待ちしておりました! 今すぐ寝室へ参りましょう!」


 二人は俺をむぎゅむぎゅとおっぱいで圧迫しつつ、寝室へ連行しようとする。


「ちょ、ちょちょちょ! ちょい待ってくれ! 紹介したい人がいるんだ!」


 俺は二人にフェイトを紹介した。そして王都での出来事や、フェイトに聞いた古代魔術の主の事、その主達全員が俺を欲しているという事を。


「良くわかったわ。つまりフェイトちゃんも私の娘になったという訳ね」


「そうじゃ。よろしく頼むぞ母上」


 なんだか複雑な関係が構築されているような......。


「じゃあ僕もシェファール様の娘ですよ」


「あら、そうね。よろしくねノーティアスちゃん」


 うーん、いいのか......?


「私の立ち位置はどうすれば良いのだ?」


 ナディアが戸惑いがちに尋ねる。


「ナディアは第二王妃って事で、二人の義理のお母さんで良いんじゃないかしら」


「なるほど!」


 母さんの提案に乗っかるナディア。カオスだ......。


「ふむ、これは兄妹だけでなく、禁断の親娘プレイも楽しめそうじゃのう」


「あはっ、本当だ! やったねパパ♡」


 擦り寄ってくるノーティアス。もう訳がわからない。だがとりあえず、俺のエナジーはモンスター級に高まっている。


「この後フェイトの歓迎会があるが......まだ開催まで時間がある。おそらく昼食に合わせての開催だから、あと五時間はあるな」


「それじゃあ寝室に行きましょう? お互い積もる話もあるでしょうしね」


「ああ、そうだな。一休みしよう」


「もー、休める訳ないでしょパパったら」


「そうじゃぞ父上。ワシは好奇心旺盛なのじゃ。五人で交わるとどのようになるのか、実に興味深い」


「私は出来れば陛下を独り占めしたいのだが......そうもいかないようだな。仕方ない。皆で仲良く陛下と愛し合おう」


 俺は美女四人によって両腕をガッチリとロックされ、そのまま寝室へと連行されて行ったのだった。

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