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第60話 死を乗り越えて

百合。俺が女優になってなんて言ったから。


洋は、前にも増して練習量を増やした。筋トレ、ピッチング、ロードワーク。


「ちょっと、早い!」


麻衣子が、自転車で追い付けない。それくらい早く走る、洋。


「オーバーランだよ!」


洋は、黙って何も答えない。


伸二が心配している。

練習のし過ぎで、球が伸びて来ない。


「休め!」


と伸二に洋は言われた。


洋は、鉛のように体が重い。


家に帰って夕飯を食べるとすぐに自室に閉じこもる。そして鳴るはずの無いスマホを見つめている。


練習試合では、ボコボコに打たれた。


ついにエースの座からも降ろされた。


そんな時に檸檬から声を掛けられた。


「洋ちゃん。」


と優しく。


洋は、緊張の糸が切れたように泣いた。


「大丈夫、大丈夫。洋ちゃんなら乗り越えられる。」


と檸檬は洋を抱きしめて言った。


それから、洋は、部室で檸檬の腕の中で眠った。起きたのは夜中だった。檸檬も寝ている。


「檸檬、ありがとう。」


と洋は言ってまた眠った。


165キロ。


数週間休むと洋は、調子を取り戻して球のスピードも戻った。


洋は、百合の死を乗り越えた。そしてさらに強くなった。


「遅い!」  


と麻衣子に言われるようになった。


ロードワーク、筋トレ、ピッチング。元に戻した。


そして、エースの座に返り咲く。


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