洋は、いつも気になっている、あじさんがいる。マスコミでもない。スカウトマンでもないおじさんが 毎日、練習を見ている。部員の中でも噂になっている謎のおじさんだ。
「おじさん、もしかしてOB?」
「良く分かったのう。」
おじさんは、監督の先輩だった。
「君ら見てると元気になるんだわ。」
「元気無いの?」
おじさんは、奥さんを亡くしていて体も壊してアパート経営をしてるらしい。
「ふ〜ん。じゃあ、暇なんだ?」
「暇人じゃな〜。」
じゃあとばかりに洋は勝手におじさんをコーチにした。監督も先輩には頭が上がらない様で黙認してくれた。
「俺さ、おじさんの気持ち少し分かるんだよね。大切な人を失った喪失感っていうの。」
「まだ、若いのに難儀じゃあな〜。」
おじさんは、アドバイスも何もしなかった。でも、ベンチに居てくれるだけで部員達は安心した。しかし、ある日、突然来なくなった。みんな心配したが誰もおじさんの住んでる家を知らなかった。洋が一番落ち込んだ。
「辛気臭いじいさんが居なくなって良かったやん!」
洋は、治を殴り飛ばした。
「お前には人の心って物が無いのかよ?」
洋は、珍しく激高した。
伸二と啓太に洋は抑えられた。
「先輩、おじさんの為にも甲子園行きましょう。」
啓太が言った。