麻衣子に、お散歩しません?と誘われた。練習試合が無い休日にスマホが鳴った。お散歩?暇だしオッケーした。
「石黒、お散歩って何だよ?」
と俺が聞くと
「お散歩は、お散歩です。」
と麻衣子は真顔で答えた。
「塩見先輩は、高校卒業したらどうするんですか?」
「う〜ん、フリーターしながら草野球。」
と俺は、答えた。
「好きな野球を続けていくって事ですね?」
「うん。」
二人は、桜並木を歩いてる。
「石黒は?」
「わたしは、医学部です。」
女医か〜麻衣子にはピッタリだと思った。
三十分ほど歩くと河原に出た。四月だが、まだ寒い。
「先輩、好きな人いないんですか?」
「石黒豊に勝つまでは女はいらね〜。」
恋愛は、野球よりも遥かに難しい。
「わたしは、いるんですよ。」
「ふ〜ん。」
こんな高飛車な女が好きな人か。
「今、先輩、バカにしたでしょう?」
「してねーよ。」
一時間してたどり着いたのは映画館だった。
「先輩が好きそうな映画やってますよ。」
「あ、河童のかーちゃんだ!」
観たかった地味な映画だった。
「観ましょう。」
映画を見た後、空は夕方模様だった。
帰りはバスで帰った。
鈍感と麻衣子はバスの中で洋の横顔を見ながら呟いた。
「ん?何か言ったか?」
意外と地獄耳。