俺は、背が低くて猫背の映画好き。映画研究部に入部した。同好会から部活に昇格したらしい。塩見洋は有名人だった。野球部のエース。その洋が映画研究部を作ったらしい。幼馴染みの伊藤舞子も映画研究部に入部して来た。
「高雄ちゃん、高雄ちゃんも映画研究部に入部したんだね。」
「うん。舞子も?」
舞子は、妹みたいな存在だった。
「うん!映画大好きだもん。」
教室は、満員の生徒。映画が始まるとみんな静かになった。
映画が、終わった後にYES、NOマーク箱が出されて投票する。そして、週間ランキングが発表される。
「今日の映画良かったね。あのさ、高雄ちゃんの家行って良い?おばさん元気?」
「ごめん。舞子、今日はちょっと無理。」
高雄は、中学生の時から一人で母親の介護をしている。舞子は、知らない。若年性アルツハイマー病なのだ。
「分かった。また今度ね。」
舞子は寂しそうに言った。
昼間は、祖母が母親の面倒を見てくれている。娘の介護とは祖母はどんな思いなんだろう?
「ばあちゃん、ただいま。母さんは?」
「薬で寝てるよ。」
俺は母親の様子を、見に行った。子供のような寝顔だった。しかし、母親は次の日死んだ。心不全だった。
お通夜、葬式と機械的に時間は過ぎていった。
「舞子、俺、野球部に入るよ。」
「リトルリーグで野球してたもんね。上手かったもんね、高雄ちゃんのバント。」
高雄と舞子は、映画を観ていた。高雄の家で。
「母さん喜んでくれるかな?」
「喜んでるよ。」
と静かに舞子は答えてくれた。