麻衣子は、滅多に泣かないが悔し涙を流していた。そんな時に洋と伸二と会ってしまった。廊下で。洋は、伸二に先に練習を行くように言った。
「石黒、ロードワーク付き合え!」
と洋は、麻衣子に言った。
麻衣子は、自転車に乗って洋と並列するように走った。マラソンランナー並みに洋は走るのが早かった。麻衣子は、全速力で自転車を漕いだ。学校から遠く離れた海で一休みした。
「で?何かあったのか?」
とおもむろに洋は麻衣子に聞いてきた。
麻衣子は、勤とのやり取りを話した。
「バカだな。」
と洋は呟くように言った。
麻衣子だって分かってる勤が独裁者ぐらいは。
「わたしは、どうせバカですよ。」
と麻衣子は少し拗ねた。
「ちげーよ。監督がバカだって言ったんだよ。」
麻衣子は、ハッとした。洋はわたしの事をちゃんと分かってくれている。
それから海を暫く見て学校に戻った。
「石黒、信じた道を行けよ。」
と洋は最後に言った。
麻衣子自身は、気が付いてなかったがこの瞬間に洋に恋していた。
俺は、エースナンバーを取り返すと逆境に強い洋は燃えていた。スカウトの古参が話しかけて来た。
「治にエースナンバー奪われたな。」
「はい。実力でね。」
と洋は答えた。
「あの監督は、バカじゃねーぞ。」
「知ってます。」
とウォーミングアップを洋は始めた。
「治は、バカだけどな。あんなに力抜いて練習してたら夏の大会持たねーな。」
洋は、何も答えずにブルペンに入った。