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第41話 もう一人のエース

犬養治が、入部して来たのは二月だった。監督が直々にスカウトして来た逸材だ。麻衣子が驚いていた。治は、実は石黒豊と同じ高校で野球部だった。しかし、豊の活躍で出番無し。そんな治に目をつけたのが監督だった。治は猫目の口だけ男と言われてきた。


「塩見!エースナンバー奪われないようにな!」


と監督に洋は言われた。


「監督、俺、即エースと違うんかい?」 


関西弁?


「まぁ、切磋琢磨して塩見を引きずり降ろせ!」


監督は、笑いながら言った。


「何じゃあ!あの狸親父が!」 


「自信無いのか?犬養?」


と伸二は聞いた。 


「あぁ?黙って俺の球捕れや!」


治は左耳に銀色クロスのピアスをしていた。そして、光、相手に勝負を挑んできた。スピードガンを手に俺は伸二の後ろに立った。


スピードガンは、160キロを計測した。


「ふーん。」


と光は、ボール球を見送った。


二球目、光のバッドが治の球をとらえてホームラン。


「嘘やろ?」


と治は、マウンドで項垂れた。


次は、洋の番だった。


スピードガンを持った治が笑っている。


スピードガンは、165キロをマークした。  


「嘘やろ?」


と治は、また項垂れた。


光を高速スライダーとフォークで三振させた。


光と治は、悔しそうに俺を睨んだ。切磋琢磨して良いんじゃないと俺は、思った。これが監督の狙いか。まだまだ、甘いね。これじゃあ、石黒豊は倒せない。

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