光が打つホームランの放物線は美しい。麻衣子は、練習試合で思った。伸二は、四番バッターから五番になったが、文句や愚痴を口にはしなかった。天才バッターに脱帽してしまっていた。
「光、野球は楽しいか?」
と俺は聞いた。
「楽しいです。」
と光は答えた。
四番バッターでファースト。光は、ホームランだけでは無くヒットも巧みに打てた。しかし、麻衣子にぞっこんなのが心配だった。麻衣子は冷たい女だ。野球人としての光しか見ていない。
俺は、麻衣子の助言でロードワークをして下半身を鍛えている。俺は体幹トレーニングも取り入れた。コントロールを良くするためだ。
毎日、伸二相手に投げ込みを重ねた。
石黒豊のビデオも見て自宅で研究している。真似してみるしかない。上手い人間の真似をする事が一番良いと考えた。ビデオは、麻衣子に借りている。麻衣子は各部員に的確な目標を持たせて達成するように指示した。まるで監督のように。
秋から冬に季節が変わる時、俺は麻衣子に質問した。
「石黒、お前から見てチームはどうだ?」
「まだまだですね。」
としか答えが返ってこなかった。
ここ最近の練習試合では負けなし。無双状態だ。
「塩見先輩は、お兄ちゃんに勝ちたいですか?」
「ああ!」
と俺は麻衣子に答えた。
「じゃあ、もっと練習して下さい。」
と素っ気ない。麻衣子はそれで良いと思った。