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第35話 試練の時

予選一回戦目で俺はコントロールに苦しんでいた。なかなかストライクが入らない。三対四。九回裏の守り。ノーアウト満塁。サヨナラ負けの予感。


「洋、落ち着け!」


と伸二がマウンドまで来てリラックスと深呼吸をしろと言ってきた。


負けるのか俺は。


いや、ここでは負けられない。


フォークを初めて投げた。三者三振で何とか初戦を突破した。


エースとして不甲斐なかった。

試合後、監督に謝罪した。


「冷や冷やしたぞ。」


と言われただけだった。


でも、達成感はあった。ピンチを乗り越えただけに訪れる喜び。


「おめでとう!初戦突破だね。」


と愛理に言われた。


いつもの駅前の喫茶店。


「ダメダメだったよ。」


「フォーク役に立った?」


愛美は、嬉しそうにケーキを食べている。


「フォークが無かったら負けてた。愛美のおかだよ。」


「わたしは、ただ、ケーキを食べてるだけ。フォーク使ってね。だからフォークってアドバイスしたの。」


まさかそんな発想とは!


俺もショートケーキを食べ始めた。イチゴが甘かった。コントロールが今日の課題だな。体幹トレーニングしてるのにな。


「考えすぎは良くないぞ!」


と愛美。


そうか、荒れ球でもいいやと開き直った。


喫茶店を出ると蒸し暑かった。


バイクに乗ると風が心地良かった。


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