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第31話 夏の香り

檸檬は、いつもより暗かった。


「洋ちゃん、水沢先輩と付き合ってるの?」


と唐突に聞いて来た。


「うん、ごめん。」


沈黙が続いた。


「何で、謝るの?」


「あ、いや。」


俺は、何も答えられなかった。律子、妙子、檸檬を正直に言って忘れたかった。夏の大会に向けて新しい気持ちでスタートしたかった。檸檬と一緒にいると説明は出来ないが重たい気持ちになった。身勝手だけれども。


「洋ちゃんも、新しいスタートラインに立ちたいんだね。」


「檸檬も?」


俺も檸檬の気持ちに気が付いていた。


「お互いに、新しいスタート切ろうね。わたし、野球部のマネージャー辞めるね。」


「あぁ。」


電話が、切れて何故だが涙が出た。檸檬の笑顔を思い出していた。一つの青春が終わった気がした。


部屋の中に新しい風が入って来た気がした。


夏の香りがした。

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