檸檬は、いつもより暗かった。
「洋ちゃん、水沢先輩と付き合ってるの?」
と唐突に聞いて来た。
「うん、ごめん。」
沈黙が続いた。
「何で、謝るの?」
「あ、いや。」
俺は、何も答えられなかった。律子、妙子、檸檬を正直に言って忘れたかった。夏の大会に向けて新しい気持ちでスタートしたかった。檸檬と一緒にいると説明は出来ないが重たい気持ちになった。身勝手だけれども。
「洋ちゃんも、新しいスタートラインに立ちたいんだね。」
「檸檬も?」
俺も檸檬の気持ちに気が付いていた。
「お互いに、新しいスタート切ろうね。わたし、野球部のマネージャー辞めるね。」
「あぁ。」
電話が、切れて何故だが涙が出た。檸檬の笑顔を思い出していた。一つの青春が終わった気がした。
部屋の中に新しい風が入って来た気がした。
夏の香りがした。