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第29話 王子様

何で、俺が王子様なんだよ?愛美の瞳がハートマークである。


「いや、帰ってから連絡しようとしたんですよ。先輩。」


と俺は言い訳。メモなんてどこいったか分からない。


「じゃあ、今、交換しましょう。王子!アミって呼んで下さい!」


と愛美は、積極的である。


「あ、はい。」


こんなに押しの強い女は初めてだ。


「あと、二人の時は敬語禁止。」


仕方無く俺は愛美と連絡先を交換した。


「王子、これからお茶でもしない?」


と愛美はすかさず聞いて来た。


「受験とか大丈夫なの?」


「大丈夫!指定校推薦が決まってるから。」


さすが、生徒会長。抜かり無しだな。


駅前の喫茶店まで二人でバイクで行った。愛美がバイクを持ってるとは驚いた。


「王子、わたしの事、忘れてる?」


愛美は、コーヒーを飲みながら聞いて来た。ん?どっかで会ってたっけ?


「うん。忘れてる。」


と俺は正直に言った。


愛美は、少し寂しげな顔をした。


「小学生の時に出会ってる。リトルリーグで。」


「ああ!アミちゃん!」


俺は、思い出した。リトルリーグ時代、俺からエースナンバーを奪った愛美。愛美は男顔負けの力を持っていた。俺の憧れの存在だった。


「アミちゃん、野球は?」


「続けてるよ。」


「マジか〜。アミちゃんならエースでしょう?」


「いや、社会人と混じってやってるから補欠だよ。」


愛美が、補欠か、信じられなかった。男の中でも群を抜いていたのに。上には上がいるな〜。


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