段々、俺は立ち直って来た。妙子の存在が律子と似すぎていてそれで心がカバーされた。妙子は社交的ではないがいつも俺をアパートで待っていてくれる女になった。
「塩見君、野球楽しい?」
とある晩、二人で映画を観ていると妙子が聞いて来た。
「まぁ、楽しいかな。」
と俺は、素直に答えた。
「わたし、野球観たことない。」
「じゃあ、今度、練習観に来いよ。」
と俺は妙子の頬にキスしながら言った。
何だかムラムラしていたのでそのまま妙子を抱いた。
妙子は、次の日、野球部の練習を見学しに来た。檸檬がルールなどを教えていた。妙子はまるで子供が初めて海を見るように野球の練習を観ていた。
「どうだった?野球は?」
とその晩、妙子のアパートで聞いた。
「何か、分からないけどすごかった。」
と妙子は珍しく興奮気味に答えた。
「田中君?だっけ?スゴいなと思った。」
「田中伸二ね。」
「だってさ、塩見君のあんな速い球捕るんだもん。」
と妙子は、伸二のファンになったようだ。嫉妬を感じたが俺は表情には出さなかった。
次の日も妙子は練習を見学に来た。
「田中君!手のひら見せて!」
と妙子はキョトンとしている伸二の手のひらを触ってスゴい硬いね!と言って関心した。
伸二は、恥ずかしそうにしていた。
俺は、妙子に新しい世界を見せて少し後悔したが妙子は律子ではないと感じ始めていた。