あれから、妙子を俺は毎日のように抱いている。律子だと思いながら。檸檬は変わらず俺を誘って来るが高校卒業してからと言って誤魔化している。妙子と映画を観ながら話す事が多くなった。
「姉は、塩見君を好きでしたか?」
表情を変えずに妙子は聞いて来た。
「たぶん、好きでは無かったと思う。」
と俺はテレビ画面から目を離さずに答えた。
律子は、一人でいる俺にたまたま声がかけやすかったんだと俺は思っている。現に律子は自殺した。俺が側にいながら。俺は、知らない内に涙を流していた。律子、何で死んだんだよ?その事が頭の中をぐるぐる回る。妙子はそれを察したように俺の涙を手で、拭った。
「なぁ、律子は、何で自殺なんかしたと思う?」
「分からない。姉とは会った事が無いから。」
と俺の質問に妙子は答えた。
「でも、たぶん、姉は塩見君を好きだったと思う。」
と妙子はハッキリ言った。
「そっか、何か双子だと分かるって言うもんな。」
と俺は寂しげ答えた。
俺と律子の仲は不思議な空気がいつも流れていた。お互いに劣等生だった事もあり体を求め合えなかった。俺に勇気が無かった。律子の横顔を見てるだけで満足していた。
「そういえば、何で律子の部屋に引っ越して来たの?」
前から疑問だった。
「お父様のご命令だから。」
とだけ妙子は答えた。