俺は、事件以来、目を覚まさない律子を見舞いに行く事が習慣になった。檸檬と伸二も一緒にだ。俺のせいで律子は目を覚まさないと責任を感じていた。今は、野球を頑張って律子が目を覚ます事が大切だと思った。事件以来、何故、律子が一人暮らししているのか分かった。しかし、それは思い出したくも無い真実だった。翔太の事は一ヶ月経過すると周りのみんなの噂は消えた。最近、マウンドに立つと息苦しくなる。でも、俺はやらなくてはいけないと自分自身を奮い立たせて二年生になった。春の選抜に選ばれて周りは騒がしかった。それでも律子は目を覚まさなかった。
「律子、春の選抜決まったよ。でも、俺は律子と映画が観たいな。すげー怖いホラーとか恋愛とか。」
と俺は眠っている律子に一人で話しかけていた。
俺は、眠っている律子にキスをして帰ろうとした時に
「あ、アイスはわたしが買って来るから。」
と律子が目を覚ました。
「律子!先生呼んで来るからな!」
「待って、側にいて。」
と興奮気味の俺に律子は言った。
「分かった。」
と俺は、言って律子の小さな手を握りしめた。
「大丈夫?塩見君?」
「それは、こっちのセリフだ。」
「だって塩見君泣いてるから。」
俺は知らない間に涙を流していた。恥ずかしかった。嬉し涙だった。それから、律子のリハビリに付き合う毎日になった。野球の練習が終わると病院に駆けつけた。リハビリに終わりに食べるアイスと映画は最高と律子は言った。しかし、俺が春の選抜に出場してる間に律子は病院の屋上から飛び降りて死んだ。俺には何も知らされなかった。ただ優勝旗を持って律子の病室を訪ねた時、律子は、アイスを食べながら珍しくニュースを見ていた。
「優勝おめでとう。」
「ああ。」
確かに律子は笑ってくれたはずだった。しかし前日に律子は死んでいた。律子が、死を選んだのが何故なのか分からなかった。ただ律子の葬式で律子を俺は見ていた。朝日奈妙子。律子の双子の妹である。
俺は、半狂乱になった。律子の家は古い仕来りをバカみたいに守る家だった。双子は不吉。そして、姉の律子はあの古いアパートに一人で隔離されていたのだ。どんなに律子が寂しかったか?辛かったか?俺は、考えた事が無かった。律子は、エンディングノートを書いていた。
「白馬の王子様現れる。塩見洋。」と書かれいた。
俺は、律子に魔法を解いてもらったカエルだった。一人ぼっちだった俺に映画の楽しさを恋の切なさをくれたのは全部、律子だった。律子は、最後まで俺の見方だった。