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第23話 好きな人

斎藤檸檬には、好きな人がいる。塩見洋だ。中学三年生の時に友達に誘われて野球を観に行った。友達は洋に夢中だった。洋はマウンドに立っていた。ツーアウト満塁九回裏だった。友達は、あと一人!と騒いでいる。洋が投げた。バッターの打った球はボテボテのゴロだった。やった!と思った瞬間、洋は球を後逸した。相手チームのサヨナラ勝ちとなった。洋はずっと泣いていてマウンドから立てないでいた。その瞬間に、檸檬は洋を好きになった。それから洋が進学する高校を聞いて回った。檸檬は、洋が進学する高校の偏差値を見て愕然とした。レベルが高い。しかし、隣に併設されている女子高なら入れると思って受験した。見事合格した。しかし、野球部の練習を観に行っても洋の姿は無かった。毎日、檸檬は野球部に通ったが洋は現れなかった。


噂で映画研究会なるものに入会していると聞いた。洋は居るんだ!と檸檬は喜んで映画研究会の教室に入った。洋は肘を机の上につきテレビ画面を観ていた。小さくて度の強い眼鏡をかけた女の子が話しかけて来た。律子ちゃんだった。入部希望を伝えると洋は、暗い瞳で檸檬を一瞥した。品定めしているような目だった。同好会の活動は映画を観て感想文を書く。それを回し読みするだけだった。檸檬は必死に感想文を書いて提出した。とにかく洋に読んで貰いたい一心だった。洋と檸檬は一緒に帰るようになったが洋は、何も話さない。何ヶ月かして思い切って家に誘うと意外にも答えはイエスだった。その頃は檸檬の猛アタックに洋も根負けして付き合ってくれた。しかし、洋から夜に電話がありおばあちゃんの具合が悪いから行けないと言われた。大ショックだったが優しい洋を褒めてもあげたかった。


しかし、その日を境に洋は同好会に来なくなくなった。中島翔太が執拗に檸檬に言い寄って来た。洋、助けてと思っていると洋はある日ふらっと同好会に現れた。洋に、ベッタリくっついていると翔太は律子に言い寄って断わられて律子を叩いた。洋は、鬼神の如き速さで動いて翔太を殴りつけてボコボコにした。檸檬は、びっくりした。洋がそんなに感情剥き出しにしているところを見たことがなかったからである。あの、マウンドで泣いてた洋のようだった。それから洋は中島翔太に襲われて記憶喪失になった。しかし、洋は明るくなって野球部に入部した。そして自然と檸檬も野球部のマネージャーになった。洋は、最初、球拾いをしていたが監督に勧められれままピッチャーになって練習試合では負け無しだった。益々、檸檬は、洋を大好きになった。

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