俺は、少し中島翔太という人間を甘く見ていた。謹慎中に夜、檸檬を家まで送っていると背後に複数の足音がした。気配に気が付いた時には遅かった振り向いた瞬間に頭に激痛が走った。意識を失った。目覚めると病院のベッドの上だった。頭にタンコブが出来ていた。一郎、未知子、有紗が病室に入って来た。
「大丈夫か?」
と一郎が俺に聞いてきた。
「うん、大丈夫。」
大丈夫だから大丈夫と俺は答えた。
一週間、俺は目覚めなかったらしい。そこは市民病院だった。道端で倒れていた俺を犬を散歩させてた人がみつけて救急車を呼んだらしい。精密検査を受けると異常無しという事で家に帰された。家に着くと波子と女の子二人が心配そうに俺を見ている。
「洋ちゃん大丈夫?」
と波子が聞いて来た。
「大丈夫だよ。」
と俺は多少痛む頭を押さえて答えた。
小さくて眼鏡をかけた女の子とやたら胸の大きい女の子が俺を見てる。
「塩見君?大丈夫?」
と胸の大きい女の子が涙を流しながら聞いて来た。
「大丈夫。で、えっと君の名前は?」
女の子がワッと大泣きして床に崩れ落ちた。隣の眼鏡ちゃんが崩れ落ちた女の子の背中をさすっている。あれ?俺なんかオカシイ事言ったかな?と思った。俺は、自室で寝かされた。胸の大きい子美人だったな〜眼鏡ちゃんはイマイチだけどと思いながら俺は眠った。次の日はまた市民病院に連れて行かれて先生と話した。
「記憶喪失?」
「ええ、記憶喪失ですよ。塩見さん。」
女医さんだった。
そのまま入院かと思いきや一時的な記憶喪失でしょうと言われて家に帰された。家に帰ると俺は一郎に
「野球したいな。パパ、キャッチボールしようよ?」
と俺は一郎に言った。
一郎は落ち着いた様子で怪我が治ったらなと答えた。それから一週間して俺は、高校生活に戻った。
クラスのみんなが奇異な目で俺を見ていた。
ただ、眼鏡ちゃんがいたので俺は話しかけてみた。
「塩見君、昨日の映画観た?」
「観てない。野球はオフシーズンだし映画なんて観ないよ。」
「ふーん、同好会には出る?」
「同好会?何の?俺は野球部だよ。」
眼鏡ちゃんが変な事を言うので俺は首を傾げた。
放課後、同好会なる物に出た。美人な女の子が俺の腕を掴んで離さない。素直に嬉しかったがただ映画を観るだけでつまらなかった。野球がしたいなと思っていた。
美人な女の子に俺は聞いた。
「君、何て、名前?」
「檸檬。」
「ふーん、あの眼鏡ちゃんは?」
窓際の前列に座っている女の子を指差して聞いた。
「律子ちゃん。」
檸檬は、難しそうな顔をして俺の質問に答えてくれた。俺は、次の日、野球部に入部した。