俺は、同好会に行くのをやめた。授業が終わるとすぐに家に帰った。部屋にこもって本をひたすら読んだ。律子や檸檬の事が頭にチラついたが自分の中に押し込めた。檸檬から電話やメールが来ていたが無視した。本を読んでると冷静な自分に戻れる。現実は殺伐としていて誘惑に満ちている。俺は、そんな日々を送っていたが寂しくなると波子の家に行った。波子は、いつも笑顔で向かえてくれた。波子には素直に正直に本当の事を話せた。律子、檸檬、野球の話しをした。
「洋ちゃんは、律子ちゃんの事が好きなんだね。」と波子に俺は言われた。
「そうかもしれない。」と正直に吐露した。
律子の美しい瞳を見た時、理性を失った。律子がコンタクトにして学校に来たら一躍、美少女と周りは騒ぐだろう。しかし、律子は眼鏡をかけて大人しくしていた。律子の気持ちが知りたくなった。
「洋ちゃん、律子ちゃんに告白してみれば?」
と波子は優しく言ってくれた。
俺は、家に帰って夜に律子に電話した。緊張で頭がクラクラした。
「あ、塩見君。」
といつもの律子の声だった。
「久しぶり。」
と俺が言うと毎日会ってるじゃないと言われた。
「あのさ、中島翔太、あれどうにかして。」
と律子は珍しくぐったりとした様子で言ってきた。「どうしたの?」
「ずっと口説いてくる。」
「え?」
まさか。
「わたしを。檸檬ちゃんなら分かるけど、何故かわたしに映画鑑賞中にずっと好きだ。付き合って欲しいって言ってくるんだよね。」
俺は、頭の中が真っ白になった。
「それは、困ったね。映画に集中出来ないね。」
と俺は言った。
「塩見君、同好会来てよ。」
と律子は言って来た。
それから翔太の愚痴と映画の話しを三時間されて律子はまた、一方的に電話を切った。俺は、焦燥感に襲われた。同好会に行かなくては!
俺は、次の日、教室に残った。律子と二人になった。
「中島翔太、そんなにヤバいの?」
と律子に小声で聞いた。
「ウザいんだよね。」
律子が表情を崩して俺に言った。
「ウザいか。」
何故か自分が言われたような気がして心が痛んだ。
「塩見君!」
と檸檬の歓喜の声がした。俺を背後から抱きしめて来た。
「バカ!心配したんだから!」
と言って来た。
「ちょっと体調悪くてさ。」
と涙ぐむ檸檬を見て俺は言い訳した。
「塩見君、来なくなってから毎日、中島翔太に言い寄られてイライラしてたんだよ!」
「え?」
律子を見るとピースサインをしている。
ハメられたと俺は思った。
そんな時に翔太が教室に入って来た。
檸檬は俺にくっついて来た。翔太は俺を睨んで来た。
「 お久しぶり。」
と翔太は一言放つと席にあからさまに不機嫌な態度で座った。