律子に、連れられてアパートの部屋に入った。一人暮らし?と思うくらい狭い部屋だった。
「一人暮らししてるの?」
と俺の背後に隠れている律子に聞いた。「
ちょっと事情があってね。」
と律子は答えた。
「ゴキブリどこ?」
「どっか行った。」
と律子はさっぱりと言って部屋の中に入って行った。
そして映画を観始めた。
「この映画良いよ。」
と言って手招きしている。
そんな時に、檸檬から電話。
「ちょっと、大丈夫?」
「おばあちゃんの具合が悪くなった。」
とおばあちゃんごめんなさいと思いながら俺は檸檬に言った。
「それは大変、おばあちゃんに付いててあげて。」と檸檬の沈痛な声がした。
「ありがとう。」
と言って電話を切った。
罪悪感に苛まわれたが解放された気分でもあった。律子は、映画に夢中である。律子の隣に座って安心した。何でだろう?律子といると何故か心が穏やかになり満たされる。
「この映画さぁ~。」
と律子は映画の解説を始めた。
俺は疲れと緊張でいつの間にか眠ってしまった。起きた時には時計は、十時を回っていた。律子が居なかった。おろおろしていると律子が帰って来た。
律子の手にはビニール袋。
「アイス買って来た。」
と律子は言ってアイスを俺に渡してまた、映画を観始めた。
「なぁ、恋愛映画観ない?」
と俺は律子に提案した。
「良いよ。」
と律子は答えた。
映画の内容は単純なものだった。出会い別れといった物だった。
律子が、
「永遠の恋や愛なんて無いよね。」
と寂し気に言った 。
「そうだね、永遠は難しいかも。」
と俺は答えた。
「でもさ、信じたいよね?」
「うん。」
律子の言葉に頷く事しか出来なかった。
律子は、いつ誰かと付き合って結婚して子供が出来るか想像出来なかった。そんな気が俺にはした。十年、二十年後もこのアパートに律子は住んでいて映画を一人で観てる気がして俺は涙が出て来た。
「塩見君は、相変わらず泣き虫だね。」
と律子は言って眼鏡を外した。
その律子の美しい瞳を見て俺は理性を失った。律子を俺は押し倒してキスをした。
「どうしたの?塩見君。」
と律子の声で理性を取り戻した。
ごめんと、俺は呟いた。
「別に良いよ。」
と律子は言って他の映画を観始めた。
何だ?今の感情の高ぶりは?俺は、どうかしてた。
「帰る。」
と俺は言って律子のアパートを出た。
コンビニに寄ってイートインスペースで買ったアイスにかぶりついた。俺は、自分を殺すようにアイスを口の中で噛み砕いた。何してるんだ?何してるんだよ!俺は!と自分自身を責めた。きっと色々あって疲れたんだ。しばらくは一人になろうと俺は決めた。