目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第14話 付き合う

俺は、檸檬に押し切られた感じで付き合う事になった。律子は、無反応だった。檸檬は、常にくっついていたいタイプなのか同好会でもずっと俺の腕を掴んで離さない。檸檬の大きな胸が当たって来る。帰り道では檸檬の家まで送るようになった。高校生になると一番男女が求め合う時になるらしいとテレビで見た事があった。俺と檸檬の仲は何故かクラスのみんなが知っていた。


「根暗な塩見に何であんなに可愛い彼女が出来るんだよ?」


「塩見君って良く見るとちょっとイケメンじゃない?」


俺に聞こえるように言ってるのか全部聞こえて来た。


しかし、律子だけは、堂々と


「昨日の映画観た?」  


と聞いて来る。


それが救いだった。弁当はいつも屋上で律子と食べている。律子は、いつも授業中に早弁してしまうので半分、俺の弁当をあげている。


「塩見君のお母さんのお弁当美味しいよね。」   


と言って頬張る。


律子の小さくて細い体にはカロリーゼロなのだろうけれど。良く食べる。


「最近の映画どう思う?」


と律子が俺に聞いて来た。  


「う〜ん。シンプルさが無くなって来たかな。」


と俺は、素直に答えた。


「やっぱりね。派手な演出が役者個体の存在感を消してるよね。」


と律子は腕を前に組んで言った。


うんうんと俺は黙って聞いていた。二人で授業をサボって話しを続けた。


檸檬は、同好会で、


「今日さ、お父さん、お母さん居ないからうちに来てよ。」


と俺に仕切りに言って来た。


それって初体験したいって意味とも聞けなかったが


「良いの?」


と聞いた。「良いよ。」


と恥ずかしそうに檸檬は言った。その時に教室の扉が開いて一人の男子生徒が入って来た。


「入会希望ですか?」と律子が席を立って聞いた。 


「はい。映画好きなんで。」と答えた。


身長が高く線が細い体つきをしていた。しかし、顔つきは精悍だった。 


「映画を観て感想文を書いてみんなと交換してみる。活動はそれだけです。」


と律子は説明して自分の席に戻った。


「中島翔太です。よろしくお願いします。」


と自己紹介して適当な席に座った。


檸檬も律子も無反応。俺だけ席を立って翔太の隣の席に座って 


「どんな映画好きなの?」


と嬉しくて聞いた。


「邦画かな。」


翔太は、さらりと答えた。


檸檬は、仕方なく律子の席の隣に座った。


帰り道で檸檬は、すぐに用意して来てねと俺に念を押した。自宅に帰ると律子から電話がかかって来た。


「ちょっと、うちに来てくれる?」 


 「家知らないけど。」と俺は律子に言った。 


律子はスマホに地図送ったからと言って電話を切ってしまった。


俺は、臆病風に吹かれて律子の家に向かった。俺は、方向音痴だがすぐに律子の住んでいるアパートを見つけた。律子に電話するとアパートからジャージ姿で律子が出て来た。


「何かあった?」


「ゴキブリが出て退治して欲しい。」


と律子は答えた。


「ゴキブリ?」


そんなために俺を呼んだのかよ?と内心は言っていたが嬉しかった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?