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第13話 ぬるま湯

冬休みが終っても俺は映画研究会にいた。


「野球やるんじゃなかったの?」


と律子に放課後、聞かれた。


「野球?」檸檬が首を傾げている。


「何かここ居心地の良いからさ。


と俺は言い訳した。


キツい練習についていけるか心配だった。一年弱、鍛えてないメンタル、フィジカル。最近、野球部の練習を見ていると大寺学監督に声を俺はかけられた。高圧的な態度は入学した時から変わっていない。


「あそこでエラーは無いよな。」


と中学生の時、全国大会をかけた試合で俺はエラーした。


その試合を監督は見てたらしい。しかし、ピッチャーの俺には強豪校からのスポーツ推薦の話が来た。エラーして全国逃してスポーツ推薦なんて受けれないと断った。恥ずかしいが俺は負けた時、ずっと泣いていてメンバーに謝れなかった。俺は、完全に殻に閉じこもった。


「野球またやる気になったか?」


と学は俺に聞いて来た。  


「いえ。」


とだけ言って逃げるようにグラウンドを後にした。


それを、俺は、律子と檸檬に話した。律子も檸檬も無反応だった。俺と野球がかけ離れているからだと思う。帰り道、檸檬は、


「野球ってそんなに楽しいの?」


と俺に聞いて来た。


俺は黙った。


「映画研究会にいてよ。」  


と檸檬は言った。 


「うん。」


と俺は答えた。


檸檬は、俺にキスして来た。


「わたし、塩見君が好き。」


と言って急いで走って帰ってしまった。


ファーストキスか〜とぼんやり俺は唇に触れて思っていた。何故か俺は律子と話したくなった。自動販売機でコーヒーを買いながら律子に電話した。律子は、


「映画見てた。」


と唐突に言って来た。


 「何の映画?」


それから俺と律子は三時間くらい話した。


「もしかして外にいるの?」


と律子は聞いて来た。


「そうだよ。」


「また、風邪引くよ。」


と自分が風邪を移した自覚が律子には無い。


「早く家に帰りな。」と律子は、一方的に電話を切った。


家に帰ると未知子が、


「有紗が帰って来ない。」


と心配していた。


「まだ 、電車の中じゃないの?」


と俺が言うと、


「メールも電話もブロックされてるみたいなの。」


と未知子は嘆いている。


あんだけ厳しくされりゃあなと俺は思ってテーブルに置いてあるオムライスを電子レンジに入れた。  


「洋、バイクで探して来て!」 


と未知子は俺に言って来た。


あまりに必死な未知子の形相にたじろいで


「分かった。」


と玄関を出てバイクに乗った。


バイクを走らせてすぐに有紗は見つかった。この寒い中近所の公園のベンチに座っていた。俺は、バイクを停めて公園の中に入った。


「ママ、心配してるぞ。」


と足元を見つめてじっと動かない有紗に俺は言った。


「わたし、最近、死にたくなるんだよね。」


と有紗が無表情で呟いた。


「ママの期待に応えるの疲れた?」 


と俺はなるべく優しく聞いた。


「それもあるけど、二時間半かけてバス、電車で通うの疲れちゃって。」


「だよね~彼氏と会う時間も無くない?」


と俺は聞いた。   


「会ってるよ。」と有紗は答えた。


色々話していると未知子から電話が来た。 


「有紗いた?」「うん。今から帰る。」


と俺は言って電話を切った。


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