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第12話 初日の出

泣いてる俺に律子は、


「初日の出見に行こう。」


と言ってくれた。


「良い場所知ってるんだ。」


「うん。」


俺は、泣き止んだ。


律子は、朝方に俺の家の前まで来てくれた。律子は、ジャージ姿で鼻をかんでいた。俺は、着ているジャンバーを脱いで律子に着させた。


「あ、ありがとう。」


と律子は戸惑っていた。


「あぁ。」と俺は答えた。


律子は、俺の手を取って走り出した。


走る?久しぶりに走っている。夢で見た。ホームベースに向かって走る俺。アウトになるのは分かっていた。でも、初日の出を見て俺はもう一度、野球をやろうと決心した。   


「俺さ、」


と言うと律子は、手を離して倒れた。


「おい!」


律子を起こすと額が熱くなっていた。


軽い律子をおんぶして俺は小走りした。俺は自分の家のリビングに布団をひいて律子を寝かせた。


「おい!大丈夫か?」と律子に俺は聞いた。


「に、肉まん。」とうなされながら律子は言った。


なんだよ、肉まんって。俺は律子の隣で寝転がった。


「洋!」 


と未知子に起こされた。


律子は、布団にいなかった。


「こんな所で何で寝てるの?」 


と有紗が俺の顔を覗いて不思議そうに聞いた。


「あぁ、ちょっと布団で眠ってみたかったんだよ。」


と俺は苦し紛れの嘘をついた。


意外と未知子も律子も嘘を信じた。布団を片付けて俺は自室に入って律子に電話した。しかし繋がらなかった。俺は何故か体が重たかった。ベッドに倒れ込んだ。風邪を引いた。律子の風邪が移ったようだ。



「洋、ごめんね、昨日は。」


と未知子は言って介抱してくれた。


「別に。」と俺は呟いた。 


有紗は機嫌良く部屋に入って来た。


「洋、昨日はありがとう。」


と有紗は幸せいっぱいといった感じで言って来た。


「別に。」


「あの綺麗な子、あんたに惚れてるよ。」


と有紗は、洋に言った。


「勘違いだろ。」 


と俺は答えた。


「あのジャージの小さい子がまさか好きなの?」


と有紗はズバズバ聞いて来る。


「好きじゃねーよ。」


と俺は答えた。


夕方になって律子から電話が来た。 


「ごめんね、何も言わないで帰って。」


 「本当だよ。」と鼻声で俺は言った。


「もしかして風邪引いた?」


律子は俺に聞いて来た。


「引かねーよ。」


それから律子は三時間話し続けた。


しんどいと俺は内心思ったが嬉しかった。


「初日の出ありがとう。」 


と俺は律子に言った。


律子は、少し黙って


「初めて誰かと初日の出が見れて嬉しかった。」 


「そうなのか?」


律子は寂しそうに告白した。


「なぁ、今年の抱負あるか?」


と俺は話題を変えた。


「去年より、多く映画観るかな。塩見君は?」  


「俺は、野球を始める。」


と言った。


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