泣いてる俺に律子は、
「初日の出見に行こう。」
と言ってくれた。
「良い場所知ってるんだ。」
「うん。」
俺は、泣き止んだ。
律子は、朝方に俺の家の前まで来てくれた。律子は、ジャージ姿で鼻をかんでいた。俺は、着ているジャンバーを脱いで律子に着させた。
「あ、ありがとう。」
と律子は戸惑っていた。
「あぁ。」と俺は答えた。
律子は、俺の手を取って走り出した。
走る?久しぶりに走っている。夢で見た。ホームベースに向かって走る俺。アウトになるのは分かっていた。でも、初日の出を見て俺はもう一度、野球をやろうと決心した。
「俺さ、」
と言うと律子は、手を離して倒れた。
「おい!」
律子を起こすと額が熱くなっていた。
軽い律子をおんぶして俺は小走りした。俺は自分の家のリビングに布団をひいて律子を寝かせた。
「おい!大丈夫か?」と律子に俺は聞いた。
「に、肉まん。」とうなされながら律子は言った。
なんだよ、肉まんって。俺は律子の隣で寝転がった。
「洋!」
と未知子に起こされた。
律子は、布団にいなかった。
「こんな所で何で寝てるの?」
と有紗が俺の顔を覗いて不思議そうに聞いた。
「あぁ、ちょっと布団で眠ってみたかったんだよ。」
と俺は苦し紛れの嘘をついた。
意外と未知子も律子も嘘を信じた。布団を片付けて俺は自室に入って律子に電話した。しかし繋がらなかった。俺は何故か体が重たかった。ベッドに倒れ込んだ。風邪を引いた。律子の風邪が移ったようだ。
「洋、ごめんね、昨日は。」
と未知子は言って介抱してくれた。
「別に。」と俺は呟いた。
有紗は機嫌良く部屋に入って来た。
「洋、昨日はありがとう。」
と有紗は幸せいっぱいといった感じで言って来た。
「別に。」
「あの綺麗な子、あんたに惚れてるよ。」
と有紗は、洋に言った。
「勘違いだろ。」
と俺は答えた。
「あのジャージの小さい子がまさか好きなの?」
と有紗はズバズバ聞いて来る。
「好きじゃねーよ。」
と俺は答えた。
夕方になって律子から電話が来た。
「ごめんね、何も言わないで帰って。」
「本当だよ。」と鼻声で俺は言った。
「もしかして風邪引いた?」
律子は俺に聞いて来た。
「引かねーよ。」
それから律子は三時間話し続けた。
しんどいと俺は内心思ったが嬉しかった。
「初日の出ありがとう。」
と俺は律子に言った。
律子は、少し黙って
「初めて誰かと初日の出が見れて嬉しかった。」
「そうなのか?」
律子は寂しそうに告白した。
「なぁ、今年の抱負あるか?」
と俺は話題を変えた。
「去年より、多く映画観るかな。塩見君は?」
「俺は、野球を始める。」
と言った。