唖然としている有紗は俺に、
「彼女」
と小さな声で聞いて来た。
「違うよ。友達。」
と俺は答えた。
有紗は、納得して無い様子だったが彼氏を探し始めた。
「お姉さん、可愛い人だね。」
と檸檬が言った。
「そう?」
と俺は、首を傾げた。
有紗は、やっと彼氏を見つけて腕を組んで歩いて来た。長身でスラッとしてる野性的なイケメンだった。
「こんば んは。」
と有紗の彼氏に挨拶されたので小さな声で
「こんばんは。」
と俺は返事した。
そんな時に、カウントダウンが神社内で始まった。檸檬がスマホで俺と自分の写真を撮った。
「ありがとう。」
と檸檬は言った。
「あ ぁ、うん。」と少し俺は戸惑った。
有紗達も写真を撮っている。四人で行列に並んだ。有紗と檸檬は女子トークで意気投合していた。俺と宮本彰さんは話が弾まない。男同士なんてそんなもんだ。
「塩見君?」
と背後から声がした。
後ろに振り返ると律子がいた。ジャージ姿だった。
「律子ちゃん!」
と檸檬が律子に抱きついた。
「風邪治ったの?」
と檸檬が律子に聞いた。
「まぁ。」
と律子は言ってフラフラしている。
「顔色悪いじゃん。」
と俺は言うと律子の小さな手を取って行列から離れた。
神社に置いてある椅子に二人は座った。
「初詣行かないじゃなかったの?」
と鼻をかんでいる律子に聞いた。
「 塩見君こそ。」と律子に言われた。
沈黙が流れた。
「本当はさ、塩見君と初詣来たかったけど誘えなくて。」
と律子は呟くように言った。
俺は、ドキドキした。
「まさか、檸檬ちゃんと来てるとはね。」
と律子は俺を見つめて言って来た。
俺は、これまでの過程を説明した。
「そうなんだ。」
と律子は答えただけだった。
「俺もさ、」
と言いかけて檸檬が歩いて来た。
「律子ちゃん大丈夫?」
と律子に聞いた。
「大丈夫。帰る。」
と律子は立ち上がりサッサッと帰ってしまった。
「姉ちゃん達は?」
「何かお邪魔かと思って。」
と檸檬は舌を出して笑った。
「家まで送るよ。」
と俺は檸檬に言った。
「塩見君って鈍感だよね。」
と檸檬は言ってサッサッと帰ってしまった。鈍感?どういう意味だよ?俺は、有紗を探したが見つからなかった。
自宅に帰ると部屋の中はしーんとしていた。一郎も未知子も起きて待っていた。
「有紗は?」
と俺は未知子に聞かれた。
「あ〜友達とまだ話してる。」
と俺は誤魔化した。
「何で一緒に帰って来なかったの!」
と未知子はヒステリーな声を上げた。
「ママ、洋に怒っても仕方無いだろ。」
と一郎は冷静に未知子に言った。
俺は、黙って自室に入った。
クソ!何で俺が有紗の為に怒られなきゃいけないんだよ。俺は知らないうちに律子に電話してた。
「どうしたの?」
と律子は聞いてくれた。
俺は、久しぶりに泣いた。