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「️穴」
「️穴」
きらり
ホラー都市伝説
2025年02月06日
公開日
2,466字
完結済
穴が見えました。
穴がありました。
穴が聞こえました。
穴がいます。
穴とはなんでしょうか。
穴にみいられました。
穴がみてきます。

       「穴」

2020年11月9日


引っ越してきたマンションの壁にゴルフボールほどの大きさの丸い穴が空いていた。流石にこれはどうかと思いマンションの管理会社に連絡をするが、

「そんなものは存在しない。あんたの見間違いだ。」

の一点張りで話を聞き入れてもらえなかった。

これ以上引っ越しに使う金もなければ幸い隣に人が住んでいるわけではないのでしょうがなくここに住み続けることにした。部屋自体は壁に穴があること自体は特に違和感はなく、日当たりもいい。穴はポスターで開いて今日から心機一転頑張ろうと思う。


2020年11月11日


仕事が全く上手くいかない。

思い当たる理由は、疲労だろうか。最近は新しい住居へ引っ越したことなどもあって疲れが溜まっているのだろう。その前の週も仕事が残り夜遅くまで起きていることが多くなった。

・・・明日も仕事がある。今日は早めに寝て明日に備えよう。


2020年11月20日


ふと何故か気になってポスターをめくって穴を確認してみた。まぁ、当たり前だが穴の中は真っ暗で何も見えなかった。仕事の方もなんとか軌道に乗ったと行ってもいいだろう。

そうだ。今の仕事が少し落ち着いたら大家さんに許可を取って業者に壁を塞いでもらおう。いつあでたっても穴があるのでは大家さんに取ってもいい話ではないだろうから。


2020年11月21日


大家さんに壁の件で連絡をとったが、

「壁に穴なんてない。そんなものでいちいち連絡を取るな。」

と怒鳴られてしまった。何か不思議に感じる。

何故、大家さんは壁を見ていないのに穴がないと断言できたのだろうか。何故、管理会社は壁を見てもいないのに穴が空いていないと断言できたのだろうか。

少し自分でも腹が立っていることがわかる。

落ち着こう。腹が立ってもいいことは何もない。

仕事の方は順調に進んでいる。


2020年11月23日


やけにエアコンの音が五月蝿く感じる。最近機械音がやけに大きく聞こえるような気がする。事務所の掃除機の音を聞いた時は軽く頭痛も感じた。

少し熱があるかもしれない。明日は病院に行ってみてもいいかもしれない。今日の夜の体調を鑑みて明日は行動しよう。

それにしても気のせいだろうか、エアコンの機械音とは別に何かの音が聞こえるような気がする。まぁ、疲れているからそんな気のせいもあるのかもしれない。今日は早めに寝よう。


202011月26日


この三日間でいくつか気づいたことがある。

まず、私の病気は医者の知る限り何かの病気や風邪などではないらしい。それは良かった・・のか。

私にはよくわからない。病気や風邪などではない。逆に言えばそれ以外に原因が存在するということだ。それが今の私にわからないから恐ろしい。

そして・・・これが一番重要かもしれない。日記を見た限りだと23日から聞こえていたエアコンの機械音以外の謎の音の発生源がわかった。

「穴」だ。確かに私の耳がすでに壊れている可能性を除けばあの音は「穴」から聞こえている。

非常に恥ずかしい限りだが私はこのような事象に非常に恐怖した。怖い。しかし私にはどうすることもできない。

この日記はこれからも続けていこうと思う。私が体験したことに何か解決の糸口があれば、願わくばその事象を私がこの日記に書き連ねていることを祈る。


2020年11月28日


やっぱりだった。

私の考えは間違ってなどいなかった。この世界は狂っていた。もしかすると狂っていない人間は私以外に存在しないのかもしれない。

事務所の後輩にふと気になって質問をした時の会話をここに記録しておく。


同僚との会話


私「すまない。一つ質問をしてもいいだろうか。」


後輩「はい?先生が私になんのようですか?」


私「・・・部屋に「穴」があるのだがどうすればいいかわかるか?」


後輩「嫌だな〜!先輩の部屋の壁に穴なんてあるわけないですよ〜!」


私「何故そう思ったんだ?」


後輩「なんでって、ないからですよ?」


以上会話記録

疑問が確信に変わった。やはりあの「穴」は私以外の人間、もしかすると全世界に認識阻害を行っているのかもしれない。やはりもうこの世界に私以外の正常な人間はいないのか。

いや、もしかすると。


2020年11月29日


仮説が正しかった!成功した!

・・・失礼。端的にいうと異変の解決に成功した。

どのようにしたかというと穴を紙を丸めたボールで塞いでみるとまずあの謎の音が消え、その後確認したが周りの人間への認識阻害がなくなっていることも確認できた。気のせいかもしれないが、体調も少し以前より優れているかもしれない。

しかし逆を言うと壁に詰めている紙のボールを取ることができなくなってしまったので私はここから離れることができなくなってしまった。本当は今すぐにでもここから離れたいのだが今私以外にこの事象を観測している人物はいないだろう。だから私はここで監視・・基生活を続けることにする。おそらくこの日記がもう2度と開かれることはないだろう。


2020年11月31日


おかしいおかしいおかしいおかしいおかしい。

「穴」の大きさがどんどん大きくなっている。もう今まで塞いでいた紙のボールでは塞ぎ切れないほどの大きさにまでなっている。しかもおそらくあの封印方法は「穴」を完全に塞がないと効果がないこともわかっている。今も少しずつだが穴の拡張は続いている。このままだと部屋全体が「穴」に飲み込まれるのではないかとも考えたがそれすらもわからない。何もわからない。いつまでこの「穴」の傍聴が続くのかも。

逃げたい。・・・もう少し頑張ってみようと思う。


202011月32日


「穴」のなかにはかみさまがいました。

かみさまはわたしにすくいをくださいました。

おかしかったのはみんなではなくわたしでした。

あなってなんですか?あなってなんでしょう?

あなはありません。しかしすばらしいです。

あなです。あなでした。あなからです。








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先日、自宅マンションで首を吊り、自殺した男性の身辺調査で新たに分かった情報ですが、どうやら男性は自殺する数日前に会社の同僚、後輩全員に決まって同じ質問、


「部屋の壁に「穴」があるのだがどうすればいいと思う。」

と言う質問をしていたことが判明しました。








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