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その光の欠片の正体は
その光の欠片の正体は
久崎楼霧
文芸・その他童話
2025年02月06日
公開日
1,032字
完結済
それは静かにキラキラと、舞い降りる

第1話


「まーた、こんなに散らかして! もしかして私が前に来た時から一度も掃除してないわけ⁉」


 ああ、またうるさいのがやってきた。僕は枕に顔を埋めて聞こえないふりをする、もう少し心地良い微睡みの中にいたいんだ。

 薄汚れた魔法士学校の寮の部屋の中、僕は彼女を無視して惰眠をむさぼろうとする。


「ちょっと、寝たふりは止めなさいよ。リヨンが起きてるのくらいもう分かってるんだから」


 そう言って僕からシーツを剥ぎ取るミリアは悪魔に見える。どうしていつもこうなんだろう、彼女の考えている事はよく分からない。

 ミリアは僕から剥ぎ取ったシーツをバタバタとはたいて丸めると、大量の洗濯物が入った籠の上に乗せた。


「本当にリヨンは私がいないと何にもできないのね? ほら、ここだって埃まみれ」


 普段は閉め切っている窓、ガタつくそれを力づくで開くとミリアは呆れるように笑った。朝の光が差し込んできて眩しい、それなのにその光の中にいるミリアはキラキラと光ってる。

 降り注ぐ光の欠片が彼女を包んでいる、神々しいその姿に僕はぼんやりとミリアを見つめていた。


「見てみなさいよ、リヨン! 埃が降り積もって逆に幻想的に見えるわ、これってちょっと不思議よね」


 そう言って笑う、ミリアの方が不思議だと思う。キラキラと輝いているのは埃、そんな中で喜んでるなんて。でも僕はもっとおかしいのかもしれない。今のミリアが今までで一番きれいに見えるんだ、一番かわいいと思ってしまうんだ。


 昔から世話焼きなミリアは今まで何度もこうやって僕の部屋を掃除しに来ていた。それが当たり前で、そんな彼女に一度だってこんな感情を抱いた事なんて無かったのに。

 まさか僕にそう思わせたのが埃だなんて予想もしなかった。


「じゃあ部屋を片付けるのは止める? そうすれば何度だって見れるかもよ」


 冗談半分でそんな事を言えば、ミリアは両手を腰に当て僕を睨んでくる。


「そう言って、リヨンは掃除が嫌いなだけでしょ! ダメよ、今日は綺麗にするまで大好きな本はお預けなんだから」


「ええ? それはあんまりだよ!」


 魔法士を目指す僕にとって読書は何より大事な時間なのに! そう訴えてもミリアはちっとも聞いてくれそうにない。

 がっくりと肩を落としてベッドから出ると、床に落ちていた本をいくつか拾う。するとまた埃が舞い上がって……


「ふふ、光を纏った魔法士みたい。リヨンはきっとすごい魔法士になれるんでしょうね」


 そう言って笑う、ミリアだってとても綺麗だ。僕たちを輝かせるそれは、またゆっくり床へと舞い降りる……





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