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第3曲目(9/?)ミラちゃん はじめての2025ねん! 〜死闘!?来夢VSオーヴァー〜

 「んも〜!来夢ちゃんのイケず♡」


 「だって、春巻さんには何も悪い事してないから、奢る理由が無いもん!」


 何気なくジェンダーレス生春巻の注文した料理を見ると、鮭の塩焼きと餃子(1個は私が食べたけど)は完食。特盛炒飯と、3玉入りの極盛り味噌ラーメンも半分ずつくらい食べていた。


 「春巻さんって、大食いなんですね。あんなに頼んだのに全部食べれそうじゃないですか!」


 「そうなのよ。もーお腹が空いちゃって!これ食べ終えて腹八分目って所かしら?もしかして来夢ちゃん、春ちゃんの食べっぷりに惚れちゃった?グフフ♡良いのよ!惚れちゃっても♡」


 ジェンダーレス生春巻は、そう言って不気味に笑いながら私に擦り寄ってきた。距離近っ!そんでもって、息がニンニク臭っ!ウチの餃子、ニンニクたっぷり入れてるからな〜。


 あれ?心なしか私を見る目付きが、さっきと違ってきてるような気がする……。


 例えるなら、感じかな?


  「もう、春ちゃん我慢できない!ダメよ♡もーう純情乙女のこの想いとト・キ・メ・キ♡は止められないわー!!」


 ジェンダーレス生春巻は、急に顔を真っ赤にしてモジモジし始めた。


 ウ~ン。ハッキリ言ってキモい!


 「どうしたんですか?春巻さん!糞詰まりにでもなったんですか!?トイレはあっちですよ?」


 「味蕾来夢!お食事中にお下品な事を言うなですのよ!」


 「わ、悪かったわよ!気を付けるわ!」



 これに関しては、オーヴァーの方が正論なので、素直に謝る。



 「あのね……あのね!春ちゃんはね♡来夢ちゃんの事が大好きなのよー!!!」


 〝ブー!〟 


 ジェンダーレス生春巻の想像すらしてなかった言葉を聞いた私は、口の中に入れていた生姜焼きやご飯をオーヴァーの顔面に盛大に吹きかけてしまった!


 「ウッ!ゲホッゲホッ!ゴホン!」


 「ギャー!何てことしやがるんですのよー!さっき、ワタクシに偉そうに注意したくせに貴女も同じことやってるじゃないですのよ!?しかもニンニク臭いですのよ!!」


 顔中が、豚肉や米粒の食べカスまみれになったオーヴァーが叫ぶ。自分でやっといて、こういう事を思うのも何だけど汚い絵面だな〜。


 そんなことよりもニンニク臭いって?そっか、私も餃子1個食べたからな〜。食べ終わったら歯磨きしなきゃ!



 「ご、ごめんてば!だって!春巻さんが急に変な事を言うからビックリしちゃたのよ!は、春巻さん、今のは冗談ですよね?」



 「冗談でこんな事は言えないわ!春ちゃんはね本気なの!」


 「あ、あのー。〝好き〟って〝LIKE〟の方ですよね?」


 「何言ってんのよ!〝LOVEエルオーブイイー♡〟ラブの方に決まってるじゃないのよ!LOVE♡♡LOVE♡ LGBT〟よ♡」


 「LOVEですってー!!?えぇっ?だって、春巻さん〝心は女の子〟なんでしょ!?あとLGBTの使い方間違っていますからー!!」


 「春ちゃんの体は男の子だけど、心は乙女だもーん♡」


 ジェンダーレス生春巻は、そう言って私に投げキッスをする。


 「なんで心は女の子なのに、女の子の私を好きになるの!?おかしいでしょ!」


 「だって、春ちゃん〝心は乙女のレズビアン〟だもの♡」


 「何を言ってんですかー!〝体が男で心は乙女だけどレズビアン〟なんて、多様性ジェンダーレス過ぎて、私には重すぎます!!」


 「春ちゃんフリーダムだから♡来夢ちゃん、春ちゃんの告白のお返事を聞かせて♡付き合ってくれるんでしょ?」


 「NOです!ダメです!!お断りします!!〝LGBT〟なのだー!」


 「ウソ!?春ちゃんフラれちゃったの!?ショッーク!」


 ジェンダーレス生春巻は、そう言って項垂れると真っ白になって燃え尽きてしまった……。


 今の流れで、どうして私がOKすると思ったのかしら?その自信の根拠を聞きたいわよ!


 「……そんな事よりも春巻さん、さっき『〝あの事〟を話したい』って言ってませんでした?何の事ですか?」


 「……春ちゃん、失恋のダメージ大きすぎて何も話せない!」


 うーん。こりゃ、今は話し相手にはならないな。それにしても初めて男の人から告白されたのに〝心は乙女のレズビアン〟が相手かよー!


 世の中には色んな人がいるから、そういう人がいるのは分かるし全否定はしないわ!


 でも!でも!私は初めてなら、本郷猛様やモロボシ・ダン様みたいな男の人に告白されたかったわ!グスン!


 「味蕾さん、生春さんは一応本気だったみたいだよ。それじゃ、僕が代わりに教えてあげるよ。ほら、今日詳細がアップされた〝お祭りのイベント〟の事だよ。まだ知らなかったかな?」


 そう言って加藤一郎君(話してみたら思ってたより良い人っぽいので、心の中でも〝君〟付けで呼んであげよっと!)は、スマホの画面を私に見せた。



「えーと、『今度の〝超鳴井界町ちょうないかいちょう祭り〟内のご当地ヒーローイベントは、何と穂戸怒区ほっとどっく戦隊マスタードレンジャーの「ヒーローショー」と、特撮、アニメソング盛りだくさんの「ミュージックフェス」の豪華2部構成となります!演奏してくれるバンドは、よい子のお友達のみんな!お楽しみにね!』……ですって?ええ!!マジでーー!!!」


 画面内の告知文を読んだ私は、驚きのあまり大声を出してしまった!


 超鳴井界町祭りというのは、この町の〝飴理缶怒区あめりかんどっく横丁〟通称・アメ横で、半年ごとに開催される大規模な町祭りである。


 いつもの祭りなら、アメ横の中心部に設置された特設ステージで、穂戸怒区のご当地ヒーローであるマスタードレンジャーのショーを行うだけなのに、今回はミュージックフェスも加わるの?


 しかも、そのイベントの演奏バンドにスーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズが選ばれたって!?


 うおおー!やったー!昨日、ライブハウスを出禁になって凹んでたけど、思わぬチャンスが巡ってきたわー!!


 あれ?どうしてウチらのバンドが出る事になったんだろ?


 あー!思い出した!確か菜々子ななこが、2ヶ月くらい前に『今度の超鳴井界町祭りはミュージックフェスをするんで、参加バンド募集中なんだって!来夢ちゃん!応募しておくね!』って言ってたっけ!



 菜々子ありがとー!やっぱし菜々子がいないと、ウチらのバンドはダメだわ!もう大好き♡



 菜々子の言ってた今夜の打ち合わせの内容って、このイベントの事なのね!

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