「まあ、お店の名前はアレだけど、味は凄い美味しいし、メニューも和洋中とバリエーション豊富で、この〝
「ライ様。超鳴井界町って何のことじゃ?」
「えっ?今、私達が住んでるこの町の名前じゃない?ここは東京都〝
「穂戸怒区の超鳴井界町?東京都に、そんな中二病を拗らせたみたいな名前の区は無い……」
私はミラの両肩を優しく掴んで、満面の笑みを浮かべて諭すように話す。
「いーい?ミラちゃん?よーく聞いて!
「分かったのだ!この時代の東京都には、穂戸怒区という区があるのだ!ここは超鳴井界町なのじゃ」
ミラは、笑顔で言う。どうやら、納得してくれたようね!良かった!良かった!
「おう!店先が五月蝿いと思ったら、来夢じゃねーか!そんな所に突っ立ってねーで、早く着替えて手伝ってくれ!」
その時、お店の入り口が開いて店長である
……〝ガジローの大将〟との出会いは、スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズを結成したばかりの半年前になる。
私が公園で、ギターを弾きながら『ウルトラマン
最初は(ナンパ?)と警戒してしまったが、話をしてる内に、大将は現在50歳で子供の頃から特撮ヲタクな事が分かって、私みたいな若い女の子が昭和特撮が好きでコピーバンドまで結成した事に、とても感動してくれたの。
それで、昭和特撮ネタで意気投合した私を自分のお店でバイトとして雇ってくれたんだ。
大将が私の活動を応援してくれる事もあって、バイト代も結構良い上に、賄い付きと悪くない条件である。
ここのバイトが無ければ、今頃はバンド活動なんて出来なかったかもしれないな。
「あ、おはようございます大将!」
「ん?何だい?そのおチビちゃんは?」
大将は、ミラの事を睨みながら言った。
その視線に怯えたミラは、私の背中に隠れてしまった。
あー、大将は強面だけど、子供好きな人だから怒ってるわけじゃないんだけど、初対面じゃ誤解しちゃうか。
「あ、あの大将。実は、この子はね。えーと、そうそう!お姉ちゃんの子供なんですけど、しばらく私が預かる事になっちゃんたんです」
「姉貴の子供だって?何で、来夢が預かるんだよ?姉貴の旦那さんや、実家の親父さんは何やってんだ?」
大将が色々と質問してくる。まあ当然だろう。私だって大将の立場なら同じ事を聞く。でも、それに対する回答はちゃんと考えてあるんだから!
「そ、そうなんですよね。実はお姉ちゃんは旦那さんの仕事の都合で外国へ行く事になっちゃったんだけど、その国は治安が悪いみたいで、泣く泣くこの子を置いていったんですよ!更に間が悪い事にパパも入院しちゃって、それで私が預かる事になったんですよ!アハハ!」
「来夢!おめえ!おめえなー!!俺を馬鹿にしてんのか!?」
大将が肩をプルプルと震わせてる。ヤバい!怒ってる?嘘がバレたのかしら?やっぱし、ここに来る15分の間で考えた設定だから無理があったのかな!?
「水臭いじゃねーか!そんな事、昨日今日で急に決まった話じゃねーだろ?何でもっと早く俺に相談しなかったんだ!」
「あ、いや、それが昨夜、未来の孫から急に決められた話でして…」
「あんだって?」
「い、いや!何でもないです!そ、それで大将、仕事の邪魔はさせないから、この子も一緒じゃダメですか?」
「良いに決まってんだろう!こんな小さい子を外に放り出しちゃ、俺の尊敬する仮面ライダーV3やアオレンジャーに悪の怪人として倒されちまうわな!何にも無い所だけどよ、来夢の仕事が終わるまで2階の応接間でも居間でも好きに使えよ!おめえも苦労してんだな!……グス!」
大将は涙ぐみながら、私に言った。強面だけど、やっぱり良い人だな。あと、今さり気なく名前が出たヒーローが偉大なる
「た、大将!ありがとうございます!本当に助かります!」
予想以上に優しい言葉をかけられて、大将に感謝して深々と頭を下げる。
「おチビちゃん!おじさんは無糖画二郎ってんだ!こんな顔してるけど、恐くないぞー!仲良くしようぜ?なっ!」
大将は、そう言って自分なりの笑顔を作って、背中に隠れてるミラに話しかけた。
その気持が通じたのか、ミラは背中に隠れるのをやめて、大将と向き合う。
「おチビちゃん、名前は何て言うのかなー?」
「……味蕾ミラなのじゃ」
「味蕾ミラか!可愛い名前じゃねーか!よっしゃ!おじさんは今から〝ミラミラ〟ちゃんって呼ばせてもらうぜ!いいだろ?」
「ミラミラちゃんか!可愛い呼び方なのじゃ!ありがとう〝ガジロー様〟!」
「が、ガジロー様?〝様〟なんてよせやい!俺は、そんな偉い人間じゃねーやい!」
「あー!大将照れてるんでしょ?可愛い所あるんですね!ウフフ!様付けして呼ぶのは、この子の癖なんですよ!」
「て、照れてなんかねーやい!開店まで時間ねーんだ!来夢早く制服に着替えろ!」
「ちょっと、あんた!さっきから店先で何を騒いでんだい?来夢ちゃんおはよう!……あら?その小さな女の子は誰?」
そう言って、店から出てきたのは大将の奥さんの〝無糖
「おう!甘子!実は〝かくかくしかじか〟……ってなわけなんだよ!」
大将は、甘子さんに事情を説明する。
「おやおや。そんな事があったのかい?ミラミラちゃんだっけ?来夢ちゃんのお仕事終わるまで、お2階で待ってられるかい?」
「はーい!大丈夫なのじゃ!こちらこそ迷惑をかけて申し訳ありませんのだ!甘子様!」
「あらまあ、礼儀正しい子ね。来夢ちゃんの姪っ子さんとは思えないわねー!」
「甘子さん、それはどういう意味ですかー?」
「オホホ!冗談よ!冗談!」
「分かってますよー!アハハ!」
この〝定食屋おととい来やがれ!〟は、1階が店舗になっており、2階が大将夫婦の自宅になってる。
ミラは、私がバイトの間、大将の自宅で待たせてもらう事になった。
「これ面白いのじゃー!」
この時代のテレビ番組が気に入ったらしく、ミラは居間のテレビから離れようとしない。
甘子さんが、仕事の合間に様子を見てくれるという事なので、まあ大丈夫だろう。
さて、私は気持を切り替えて仕事しなきゃ!
開店時間の11時30分となった。私の主な仕事は、お客さんの注文を受けることや、レジ会計、出来た料理をテーブルまで運んだり、空いたお皿の後片付けなどである。
……いつもの事ではあるが、開店と同時に沢山のお客さんが来て忙し過ぎて、あっという間に15時になった。
最後のお客さんも店を出たので、昼の部はこれで終わり。16時までは休憩時間となる。
「お疲れ!来夢、今日の賄いは生姜焼き定食だ。ミラミラちゃんはカレーライスでいいか?」
「あ!はい!ミラの分まで用意してくれてありがとうございます!」
労働後の遅い昼食が最高に美味いのよね!厨房に入ると生姜焼きの美味しそうな匂いが漂ってくる。あー!お腹空いたわ!
「ミラミラちゃん、今寝ちゃってるよ。さっきまで楽しそうにテレビ観てたんだけど、疲れたのかねえ?」
2階から降りてきた甘子さんが、そう言った。
昨日の夜は色々あったからなぁ。まだ疲れが残ってるんだろう。
「そうか、じゃあ起きたら温めなおしてやるよ!来夢、先に食ってろ!」
「すいませーん!誰かいないんですのー?お食事がしたいんですけどー!」
賄いの生姜焼き定食を店のホールに運ぼうとした瞬間、店の入り口の方から女性の声が聞こえてきた。……あれ?どこかで聞いたことあるような声だな?
「ん?お客さんか?おい!来夢、店の暖簾はしまったのか?」
「いけない!忘れてた!どうしましょう?もう昼の部終わりなのに」
「暖簾をしまい忘れてたんだから、こっちが悪い!来夢、注文聞いてこいや!」
まあ、私のミスだから仕方ない。言われた通り注文を聞くためホールに戻る。
「いらっしゃいませー!……あ!」
「み、味蕾来夢!?どうして貴女が、こんな所にいるのですのよ!?」
「ゲッ!〝
「ククムカキィィー!そのアダ名で呼ぶのは止めるんですのよー!!」
私にオバサンダーと呼ばれて、壊れたアホウドリのようにキレてる目の前の女の本名は、〝