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第3曲目(2/14) ミラちゃん はじめての2025ねん! 〜死闘!? 来夢VSオーヴァー〜


 目の前の光景は先程までの幼稚園ではなく、見慣れた私のアパートだった。


 どうやら、布団じゃなくて畳で寝ていたみたいね。


 それにしても、とんでもない夢だったわ。オーヴァーの奴め!夢の中でも調子に乗りやがって!


 ああ!畳で寝たから背中が痛い!……部屋の隅を見るといつも使ってる布団が僅かに膨らんでいる。


 今、布団を占拠してる持ち主は、一緒に暮す事になった未来の曾孫のミラである。


 そっと様子を見ると、ミラは寝息を立てていた。


 昨日まで、この部屋は私だけの空間だった。


 でも、たった1日経っただけで、私以外の人間がいる。しかも、この時代にはまだ産まれていない曾孫なのだ。


 そう考えると、、何だか凄い不思議な気分になる。


 最近の漫画やアニメとかで異世界に転生したばかりの主人公って、今の私と同じ気持なのかな?


 アハハ!ちょっと違うかな?



 まあ、この子も色々あって疲れたんだろ。もう少し寝かせてやるか。


 「う、うーん!ふわーわぁ!おはようなのじゃー!ひいおばあ様」


 ……そう思った直後、ミラは目を覚ました。


 「ごめん。起こしちゃった?」


 「ううん!よく寝れたのじゃ!」


 スマホの時計を見ると、まだ朝の8時半だった。


 さーて、これからどうしようかな?


 〝グゥ~〟


 そう思った直後、自分でもドン引きするくらい大きく腹の虫が鳴る。


 「アハハ!ひいおばあ様!お腹空いたのか?そういえば、来夢もお腹空いたのじゃー!」


 「この時代にいる間は来夢じゃなくて、ミラでしょ?」


 「そうだったのじゃ!まだ慣れてなかったのじゃ!エヘ!」


 ミラは、そう言って舌を出して自分の頭を軽く小突く。


 「まあ、ミラってのも私が思いつきで決めた名前だからね。それじゃ私の曾孫だから〝ひまちゃん〟って名前はどう?あー!ひまわりちゃんでもいいかもね!アハハ!」 


 「えー?あんまり可愛くないのじゃ!」


 「何でよ!ひまちゃんって物凄く可愛い名前だろうが!野原家の人達に謝れよ!」


 「ごめんなさい!来……じゃなくて、ミラが悪かったのじゃ!ところで、野原家って誰の事なのじゃ?」 


 「え?あー、そ、それはね……。ま、まあ分かってくれりゃいいのよ!あんたの名前はミラって事で良い?」


 これ以上詳しく説明するとボロが出るかもしれないので、とりあえず話を終わらせる事にする。


 「ミラは可愛くて気に入ってるから良いのじゃ!そんなことより、さっきも言ったけどミラはお腹空いたのじゃ!何か食べたいのじゃ!」


 「そ、そうだったわね。何か残ってる食べ物あったかな?ゲッ!」


 冷蔵庫の中を見たが、何も無い!


 いや!厳密に言うならば、醤油とマヨネーズと氷ならある!


 ええーい!相手は子供だ!これで何とか誤魔化してみるか?


 「あ、あのー?ミラちゃん?氷でも食べる?お醤油かけて食べると美味しいよー!あ、マヨネーズでも美味しいと思うよ!きっと!うん!アハハ!」


 「ひいおばあ様!それは食事とは言えないのだ!児童虐待案件になるのじゃ!」


 「ご、ごめんなさい!でも!でも!私は貧乏なフリーターなんだもん!そんなにイジメないでよ!ひいぃーん!」


 「しかたないのう!それじゃミラが持ってきたご飯を食べるのじゃ!」


 そう言って、ミラは玄関口に置いてあったキャリーケースを持ってくる。


 あれは、素敵空間を解除する直前に、ミラが持ってきた物だ。


 思い出した!たしかいんは『1年分以上の食料を来夢ちゃんに持たせてるから』と言ってたわ(※)!


 「ねえ、ミラ!もしかして、そのケースの中に1年分以上の食べ物が入ってるの?」


 「そうなのじゃ!」


 「わ、私にも少し分けてくれる?」


 「もちろんOKなのじゃー!」 


 そう言ってミラはケースを開けた。


 どう押し込めても、こんなケースに1年分以上の食べ物なんか入れられる訳ないけど、今は何か食べられれば、それでいいわ!


 「やった!やった!食い物!食い物ー!……って、ええー?何よこれー!?」


 ケースの中を見た瞬間、私は落胆の声をあげてしまう。


 だって!だって!豆粒サイズの無数の食品サンプルらしき物と、リカちゃん人形サイズの女児用の洋服と下着しか入ってないんだもん!


 「どうじゃ!どれも美味しそうじゃろ!」


 「これのどこが1年分の食料なのよー!ただのオモチャじゃない!……期待して損したわ!もういいわよ!」


 私は、空腹を紛らわすため、マヨネーズをかけた氷を齧り始める。


 くぅぅー!我ながら惨めだわー!


 「ふん〜♪ふん〜♪決めた!ミラは「お子様ランチ」にするのじゃ!」


 そう言って、ミラはキャリーケースから豆粒食品サンプルを1つ取り出して小躍りする。


 「ひいおばあ様、電子レンジを貸して!」 


 「はい!はい!どうぞ!おままごとでも始める気?」


 ミラは、電子レンジに食品サンプルを入れて、操作を始める。


 はあ、子供はお気楽で羨ましいわ。


 「えーと、500Wで10秒チンなのじゃ!」


 〝チーン〟


 10秒後。


 ミラがレンジの扉を開けた途端、物凄い良い匂いが漂ってきた!


 えっ?何?この匂い?お腹減りすぎて、鼻までおかしくなったのかしら?


 「わーい!美味しそうなのじゃ!」 


 「げげ?そ、それは!?」


 ニコニコ顔のミラがレンジから取り出したのは、旗が刺さったオムライス、ハンバーグに海老フライ、フライドポテトなどがお皿の上にてんこ盛りになっている豪華なお子様ランチだった! 


 しかも、ホカホカと湯気を立てており、見ただけで美味しいのが分かる!


 「ど、ど、ど、ど、どうしたのー!これ!どこから持ってきたのよー!?」


 「え?そこに沢山あるじゃろ?」


 そう言って、ミラはケース内の豆粒サイズの食品サンプルの山を指差した。


 ま、まさか、あの豆粒サンプルがレンジで10秒チンしただけで、こんな大きくて美味しそうな料理になったっていうの!?




※第2曲目(4/5)参照

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