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第2曲目(3/5) 私が来夢で、この子も来夢?作者よ!もう少し設定を考えられなかったのか?えっ?お前が何とかしろって?

 「えっ?何、この音は?」


 警報が鳴り止むと、今度は電子音声が室内に流れる。


 「プライベートディメンションルームノタイザイジカンハ、〝ノコリ15フン〟デス!カイジョジュンビヲオネガイシマス!」


 「トト様。そろそろ時間切れのようだのう」


 ちび来夢が、この部屋に入る時に使ってた手のひらサイズのタブレットのような物の画面を見ながら、華印に話す。


 「そのようだね。大体の話は出来たし、じゃあ出よっか?」


「どういう事なの?」


 事態が飲み込めない私は、華印に質問する。


 「このプライベートディメンションルームは、1時間しか使用出来ないんだ。タイムリミットを過ぎると、出口が消滅して元の次元には帰れなくなってしまうんだ。だから、15分以内に解除しないと」


 えっ?後15分しかいられない?このウルトラシリーズに登場する防衛チームの作戦室みたいな室内に、等身大のヒーロー人形が沢山並んでるこの素敵空間には、まだまだいたいけど、流石に一生出られないのはキツいな。ヒーロー達ごめんなさい!


 「ねえ?どれでも良いから、この人形1つだけ持って帰っても良い?」


 私は、側に置いてあるヒーロー人形を指差して、華印に言った。


 「そう言うと思った。でも、ダメなんだ。プライベートディメンションルームで実体化した物は、元の世界に持ち込むと同時に消滅しちゃうんだよ」


 「そ、そうなの?残念だなー」


 華印の回答を聞いて、私は肩を落とす。


 「それじゃ、解除するよ。来夢ちゃん、おねが……」



 「ちょっと待った!もう少しだけ聞きたいんだけど、良い?」


 素敵空間を解除しようとする華印に、私はストップをかける。


 「何だい?話したように、もう時間無いんだよ?」


 「ベガ星人だっけ?その宇宙人の事について、もっと詳しく教えてよ。2110年には、人類はその宇宙人と交流があるの?華印の時代の人々は、皆タイムスリップ出来たり、この素敵空間を使う事が出来たりするの?」


 本物の宇宙人に興味のある私は、どうしても聞きたかった事を華印に質問した。


 「いいや、ベガ星人の技術を使えるのは、俺達、味蕾家だけだよ」


 「どうして、あんた達だけなの?」


  華印は、腕組みをして少し考えていたが、やがて話し始める。


 「……時間が無いから、ザックリと話すけど、俺は独身時代ソロキャンプが趣味だったんだ。あれは、来夢ちゃんが産まれる3年くらい前。ほとんど人が来ない穴場スポットでキャンプしてた日の夜中、俺のテントの隣にベガ星人の宇宙船が墜落してきたんだよ。俺は、傷ついたベガ星人を世間で騒がれないように匿って看病した。そのお礼にタイムカプセルや、プライベートディメンションルーム〝など〟を発動させる機械をもらったんだ。はい!おしまい~♪」


 「おしまい~♪じゃねーよ!いくらこの作品が、SFコメディーだからって、ザックリとし過ぎだろ!作品的に大事な所っぽいから、もう少し掘り下げなさいよ!」


「メタ……」 


 「待った!どうせ『メタいのぅ。ひいおばあ様』って言うんでしょ!あんたの台詞は、お見通しなんだからね!ドヤ!」


 「むー!ひいおばあ様の意地悪ー!」



 ちび来夢は、私に決め台詞を先に言われたのが悔しかったらしく、ほっぺを膨らませる。


「そのベガ星人って、どんな姿してたの?クール星人みたいな人間離れした姿なの?」


 「クール星人って、『ウルトラセブン』の第1話に出てきた蜘蛛みたいな宇宙人でしょ?俺が遭遇したベガ星人は、イケてる中年男性の姿だったよ」



 「そうなんだ。それにしても、クール星人を知ってるなんて、なかなか通ね!流石は私の孫!」


 華印から『ウルトラセブン』の名前を聞けて嬉しくなった私は、サムズアップしながら言った。



 「お婆ちゃんに、子供の頃から昭和特撮番組を色々と見せられたからね。……仕方ないなぁ。それじゃ、もう少しだけ話すけど、ベガ星人ってのは、こと座のベガ星に住む宇宙人で、地球より遥かに優れた文明を持ってるんだ。彼らは、この時代よりも前に密かに地球を訪れていて、何回か目撃もされているらしいよ。その伝説は多分、この時代でも何らかの形で存在してるんじゃない?」


 華印の質問に、今度は私が腕組みをして考える。そういえば、ベガ星人って名前は、以前にもどこかで聞いた事あるような?


 特撮番組じゃなくて、どこだっけ?……あっ!


 「思い出した!昔、読んだスピリチュア系の本に載ってたんだ!確か、前世で宇宙人だった人間、えーと、そうそう!〝スターピープル〟と呼ばれてる人が、ベガ星人だって書いてあった気がする!」


 「なるほど。この時代では、そういう風に伝わってるのか。でも、俺が助けたイケオジのベガ星人からは、そんな話は聞かなかったなぁ。少なくとも俺の知ってる限りでは、ベガ星と地球はそれぞれ独立した星のように思える。その証拠に、彼らの言語は、明らかに地球とは異なる物だったから、そのままじゃ会話にすらならなかった」


 特撮番組の宇宙人は、当然のように日本語で話すけど、本物は宇宙語を話すのね。なるほど!リアリティあるなー!


 「それじゃあ、どうやってコミュニケーションを取ってたの?」


 「ベガ星人は、腕時計型の翻訳機を持っていてね。幸い墜落事故でも無事だった。彼が、その機械に話しかけると、俺の頭脳に直接日本語として、言葉が伝わってくる。逆に、俺が翻訳機に話しかけると、彼にはベガ星の言語として伝わるんだ」


 腕時計型の翻訳機か!しかもテレパシーみたいに相手の言葉が、脳内に伝わってくる!?そんな素敵アイテム、特撮ヲタの琴線に触れまくりじゃないの!!


 「凄い翻訳機ね!私も使ってみたーい!今、持ってないの?」



 「いや、持ってないよ。そんなこんなで、1ヶ月くらい看病しつつの共同生活してたら、彼の奥さん、娘さん、息子さんの家族が、新しい宇宙船で迎えに来た。よくよく話を聞くと、彼はベガ星の中でも有名な科学者だったようでね。匿っていたお礼として、ベガ星の技術の一部をプレゼントしてくれて、帰っていったよ。お婆ちゃんが興味津々の翻訳機と一緒にね!」


 「なーんだ。つまんないの!」


 「今だから笑い話で済むけど、迎えが来るまでのベガ星人との生活は、色々と大変だったよ。〝うまい棒の二郎系ラーメン〟味が、彼の大好物だったんだけど『こうやって食べるのが1番美味しいよねー!』って言って、袋ごと食べるんだぜ?しかも会計前に!」


 「何か迷惑系動画配信者みたい……。袋ごと食べるってワイルド過ぎね。それよりも、うまい棒の二郎系ラーメン味!?何よ!その食欲をそそるワードの組み合わせは!!私も食べたいわよ!」


「ああ。この時代では、二郎系ラーメン味は、まだ販売してないのか。まあ、俺が子供の頃、たまにお婆ちゃん買ってくれたから、その内食べれるよ。でも、1番困ったのは、ベガ星人のせいで、俺の髪は、髪は……」


 華印は、遠い目をして言葉を詰まらせる。


 「そっか。あんたの髪が青色なのも、ベガ星人と接触した影響だったのね?」


 未知との遭遇を果たせば、髪の色があり得ない風に変わるのも、きっとよくある事なのだろう!うん!うん!


 「いや、これ地毛だけど?墜落の際に発生した爆風に巻き込まれたせいで、俺の髪の毛は物凄いアフロヘアーになって、1ヶ月以上戻らなくて恥ずかしい日々送る事になったんだー!」


 〝ズコー!〟


 私は、華印の話を聞いて盛大にズッコケた!


 「髪の色じゃなくて髪型の話かよー!っていうか、その頭は地毛なの?もしかして、この子も?」


  私は、ちび来夢の頭を指差して、華印に聞いた。


 「えへへ!来夢の髪の毛、ピンク色で可愛いじゃろ?」


 ちび来夢は、自慢気に自分の髪をかき上げる。


 「2人とも日本人でしょ?未来の日本人って、黒髪じゃないの?」


 私は、2人の髪の色が、あまりにも日本人離れしてるので、地毛だとは信じられなかった。てっきり、染めてるかと思ってたわ!


 「俺達の時代では、遺伝子操作の技術が2025年よりも、遥かに発達してるんだ。だから、産まれる前に、その子の髪の色や体型とかをカスタマイズする事が出来る。そのため、2110年には黒髪の日本人は、ほとんどいないんだ。だから、俺たち2人の青やピンクの髪色は生まれつきってわけさ!」


 「マジで!?まるで、アバターのキャラ設定みたいじゃない?」


 「やっぱり、お婆ちゃんって結構鋭いんだね。遺伝子操作技術を受けて産み出された人間は、当初は〝アバター世代〟と呼ばれてたんだ。学校の授業で習ったけど、最初は世間から『産まれてくる赤ちゃんは、親の玩具じゃない!』と相当非難されたみたい。でも、2110年になると、当たり前の事だし、誰も気にしてないから死語になってるけどね」


 「ベガ星人がいなくても、2110年って何でもアリになってるじゃないの!」



 「タイムリミットマデ〝ノコリ5フン〟シキュウ、カイジョシテクダサイ!」



 私が未来の技術に驚いてると、先程の電子音声が、再び室内に流れる。


 「トト様。もう時間が無いのだ」


 「それじゃあ、元の世界に戻ろう。来夢ちゃん、室内をデフォルトに戻して」


 「はーい!」


 ちび来夢は、例のタブレットっぽい物を操作する。すると、ヒーロー達の人形や作戦室風の背景は消えて、最初に見た真っ白い部屋に戻ってしまった。


 ああ!私の素敵空間が、無くなっていく!もう少しだけ見ていたかったなー。



 「来夢ちゃん、戻る前に自分の荷物を忘れないで!」


 「はい!トト様」


  華印に言われたちび来夢は、再び機械を操作する。すると、彼女の目の前に青い扉が出てきた。



 「え?そのドア、どこから出てきたの?」



 「ひいおばあ様、細かいことは気にしないのだ!」



 ちび来夢は、私の質問に答えず、ドアを開けるとキャリーケースを取り出す。



 「よし、それじゃ、解除先は、お婆ちゃんの家の近くにするけど、出来れば人気の無い公園とか無い?」



 「あ、ああ。近所に☓☓山公園ってのがあるけど?」



 「来夢ちゃん、解除先の設定は☓☓山公園でお願い!」 



 「合点承知の助!プライベートディメンションルーム、解除なのだ!」



 ちび来夢の言葉とともに、目の前が真っ白になった……と思った次の瞬間、私は、☓☓山公園に立っていた。



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