「ひ、
「おーい!お婆ちゃん、聞こえてるかい?」
「ひいおばあ様ー!お返事してー!……ところで、トト様、処女とか、エッチって何のことじゃ?」
「あ、いや、それは、えっと、まだ
「あ、は、はい!エッチ教えてください!」
「えぇぇぇー!お、お婆ちゃん。その発言は、倫理的に非常にヤバイよ!」
「あ、あわわわー!今の嘘!嘘!え、えっと?あれ?何の話だったっけ?」
私の孫を名乗る
だが、そのおかけで、ようやく正気に戻れたようだ。
「お、やっと話が出来そうだね。実はさ、俺どうしても大事な……」
「ちょっと待った!その前に確かめたい事があるんだけど良い?」
「え?ああ、別に良いけど?」
「おーい!ナレーターさーん!今回は、私が地の文をやらなくても良いんでしょ?」
私は、天井に向かって叫んだ。……しかし、何も返事はない。
「お婆ちゃん、誰と話してるの?」
「あ、いや、あのね。前回のラストで、ナレーターさんが出てきたと思うんだけど、あれ?おかしいなぁ?」
「メタいのぅ。ひいおばあ様」
仕方ない。今回も私が地の文も担当するしかなさそうだわ。私は、深呼吸をしてから華印と、曾孫を名乗る〝ちび来夢〟に言う。
「あんたらが、未来から来た私の孫や曾孫だって?そんな漫画みたいな話を信じられると思う?どうせ嘘を言うなら、もっとマシな嘘にしなさいよ!」
「ひいおばあ様、来夢たちは嘘なんか言ってないぞ!」
「そうだよ。お婆ちゃん、このプライベートディメンションルームについては、どう説明するんだい?これは、2025年時点の人類には到底出来ない技術だと思わない?」
「なーにが、プログラミングソフトよ!!どうせこんなのトリックよ!私を麻酔薬かなんかで眠らせて、真っ白な部屋に連れ込んできたんでしょ?」
「お婆ちゃん、ほとんど合ってないよ。まだ、前回の〝プリペイドカードデリバリー〟の方が近かったよ」
「トト様、ひいおばあ様って、もしかして物覚え悪いのか?」
「バカにするんじゃないわよ!私、昭和のウルトラ怪獣の名前、全部言えるんだから!どう?見直したでしょ!」
「……何か、預けるの不安になってきたな。でも、今更、引き返せないしなぁ。仮に、さっき言った通りだとしてさ、真っ白な空間が、一瞬でお婆ちゃんの趣味全開の部屋に変わったことについては?」
「こ、これは、そうそう!プロジェクションマッピングみたいなものでしょ?このタロウだって、本当は実体が無い映像の1つで……」
そう言って、私は近くのウルトラマンタロウの等身大人形に手を伸ばす。
あれ?感触がある!これ、本当に存在してるんだ!?
「ほら、説明できないでしょ?今この周りにある物は、全て実体化してるんだよ!これで、俺達が未来からやってきたと信じてくれるかい?」
華印は、勝ち誇ったような表情で、私の顔を見つめる。
「ぐ、ぐぬぬ!分かったわよ!あんたらが、未来から来たというのは、信じるしかないようね。どうやって、現代に来たの?85年後にはタイムマシーンが開発されてるの?」
「いいや、流石に俺達の時代でも、そこまで技術は進んでないよ。〝彼ら〟から頂いた〝タイムカプセル〟を使って、俺達はこの時代にタイムスリップしてきたのさ」
「タイムカプセル?そういえば、さっきも言ってたけど、彼らって誰の事を言ってんの?」
私は、先程答えてもらえなかった質問を再び華印にぶつける。
「あの日、俺が出会った織姫の星からやってきたという〝ベガ星人〟さ」
「ペガ星人?『ウルトラセブン』の第36話に登場した宇宙人の事?」
「……見た目は全然若いけど、貴女が俺の知ってるお婆ちゃんと同一人物なんだなって、改めて実感したよ。俺が言ったのは、ベガ星人ね!俺達がプライベートディメンションルームを発動したり、タイムスリップをする事が出来たのは、宇宙人からプレゼントされた技術を使ってるってわけ」
「ええええー!本物の宇宙人!!!凄い!凄い!85年後の世界って、宇宙人と交流してるの!?むしろ、私を未来に連れてってよ!宇宙人と会いたいわー!」
宇宙人が実在するという話を聞いた私は、テンションが上がりまくって、華印の両手を掴み、2人でクルクルと回転しながら、頼み込む。
「め、目が回る〜!突然のグルグルダンスは止めてよ〜!い、いや、それは無理なんだ。今回、未来に帰れるのは、俺1人だけなんだよ。後で見せるけど、タイムカプセルは1人乗り専用で、手持ちの分は、残り1つしかなくてね」
「えっ?じゃあ、この子はどうやって未来に帰るのよ?」
回転を止めた私は、ちび来夢の方を見る。
「迎え来る時に、来夢ちゃんの分のタイムカプセルを用意して戻ってくるからさ」
「待った!私は、この子を預かるつもりは無いし、アンタらが、私の孫や曾孫なんて事は信じてないんだからね!」
「やれやれ。未来からやってきたのは、信じてくれたのに、そっちは、まだ信じてくれないんだね?」
「当たり前じゃない!証拠を見せなさいよ!」
「仕方ないなぁ。それじゃあ、お望み通り、証拠を見せるけど、怒らないと約束してくれる?」
「約束するから、早く!」
「お婆ちゃんが、高校時代の頃。自転車を走行中、霊柩車に撥ねられる交通事故に遭ったでしょ?幸い、右足を骨折するだけで済んだけど、あれさ『仮面ライダーストロンガー』のオープニング映像のバイクアクションの真似をしてスピードの出し過ぎで信号無視したのが、原因なんでしょ?」
「ギニャー!な、な、な、な、なんで、そ、そ、それを知ってるのじゃー!?」
「ギニャー!だって!ひいおばあ様は良いリアクションするのう。面白ーい!アハハ!」
華印の言った通りだわ!でも、でも、女の子が『仮面ライダーストロンガー』の真似して交通事故に遭ったなんて、恥ずかしくて言えないから、医者や警察にはもちろん、家族にも話してない私だけの秘密だったのに!
ちなみに、お見舞いに来た霊柩車の運転手さんには「そのまま、ウチの車に乗らなくて良かったねぇ」なんて、嫌味を言われたわよ!こっちは、怪我人なのにさ!
「だって、お婆ちゃんが話してくれたから。俺が、ガキの頃、転んで泣いてた時に『お婆ちゃんも、昔ね(中略)だから、華印もこんな事くらいで泣くんじゃない』って励ましてくれたんだよ」
「フ、フン!そ、それだけじゃ、し、証拠に、な、ならないわねー!」
「じゃあ、もう1つ見せるよ」
そう言って、華印はポケットからスマホを取り出した。
現代の機種と比較すると、やや薄くて小型になってるみたいだけど、そこまで大きく変わってないみたい。
「ほら、これこれ!」
「い、嫌ぁああー!な、な、何故、お前がその画像を持っている!!??お前は、私専門の黒歴史泥棒かー!?」
華印のスマホの画面を見た瞬間、私の顔は恥ずかしさで真っ赤になった。
「これ、お婆ちゃんが考えたヒーロー『怪傑超人・ウルトラ仮面だゼーット!』が活躍する漫画だよね?」
そうなのだ!高校3年の夏休みに、昭和特撮ヒーロー番組を観るのにハマり過ぎてた私は、自作のヒーロー漫画を描いて投稿しようと思ってたのだ。
でも、夏休みが終わって読み直してみると、あまりにも酷いデザインとストーリー展開だったので、急に恥ずかしくなってしまい、勉強机の引き出しの中に封印してしておいたはずなのに!
「……どうして、お前がそれを持ってる?」
「これも、お婆ちゃんが『私、若い頃こんな漫画を描いた事あってねー』って、俺に見せてくれたから、撮っておいたんだよ」
「何勝手に、私の黒歴史を暴露してんだよ!未来の私!お前は、暴露系動画配信者かよ!」
「今の言葉、俺達を孫と曾孫って認めてくれたって事?」
「ち、ちが……」
「トト様。ひいおばあ様の描いた漫画、来夢も見たいのだー」
「いいよー!」
「バカ!やめろ!いや、頼む!やめてくだされー!わ、分かったわよ!!あんたらが、私の孫と曾孫って認めるわよ!だから、その画像をすぐ削除してくれー!」
私は誓った。もしも歴史を変えられるなら、自分の黒歴史は、絶対に誰にも話さないまま人生を終えようと!