俺が覚えているのは、ここまでだ。
気がついたら、バンドアパートの中に居た。
どうしたもんかとしばらくの間、建物の中を散策していたら、半透明になったお前の姿を見つけたから、様子を見ながら話しかけたんだ。
陽、お前、本当は何を覚えている?
あの後一体、何が起きたんだ?
恐らく、頭を打って意識を失った俺が、この世ならざる、バンドアパートに彷徨っているのは、まだわかる。今、俺は死にかけてるんだろう。
というのも、この場所は、〝死〟に近しい場所に居るほど、魅了されてしまうんじゃ無いかと思うんだ。
俺は、妹が死んで、その幻影にずっと悩まされていた。――永遠にこの症状が続くのなら、いっその事……と、血迷った事も――正直、ある。だから、幽霊達の音楽が聞こえたし、夢でアパートの一室に閉じ込められて、出られなかった。
陽の場合は、現実に帰るのが嫌で閉じ込められたよな。
――あの時、本当はお前、死にたいって、思ってたんじゃないか?
――どちらも、〝帰りたい〟と強く願うことで、外に出れた。だからきっとまだ、終わりじゃない。
でも、一体全体どうしてアンタまで、再びこのアパートに閉じ込められているんだよ?