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その日は恭介にとって地獄だった。運が悪い事に移動教室が多く、事実ではないのかもしれないが、恭介は全ての生徒が自分たちの噂をしているようにすら感じていた。
「……あの人がそうなの」
「うん、らしいよ」
「堂々と一年の子と歩いてるなんてねー。相手の子、あたしばっちり見ちゃったけど、外見はほとんど中学生だよ。勇気があるというか、チャレンジャーというか、とにかくちょっと逸脱はしてるよねー」
四時間目の授業がある音楽室への廊下の端、恭介に不審げな目を向けながら、知らない女子たちがこそこそ話をしていた。早足で通り過ぎた恭介は、苛立ちを加速させる。
(くだらない、非生産的な噂をぺらぺらぺらぺら。もっと他に話すことないのかっつの。せめて聞こえないように喋れよな。救いようがないにも程があるだろ)