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朝練後の着替えを終えた恭介は、恐る恐るクラスに入った。すると教室の端で話し込んでいた狩野
恭介は京香の当番掃除のさぼりを、先生に言いつけた事があった。以来京香には嫌われているらしく、事あるごとに恭介に絡んできていた。
キスができるような近距離まで近づくと、京香は恭介を間延びした声で嬲り始める。
「ロリコン部長のご登場、だね。ってなんかしおこんぶちょーみたいになったね。まあ笑えるって点じゃあ、なーんも変わんないけど」
ギャルそのものな風貌の京香は、にやにやと締まらない笑顔を浮かべ続けている。
「は、ロリコン? 何の話だよ。全然わからんから、教えてくれっての」
内心の焦りを隠しつつ、恭介は負けじと力強く詰め寄った。
「うわー、まだばっくれられると思ってんだ。おめでたい頭してるよね。ゆっとくけど、学校中その話題だよ。天下のサッカー部キャプテン様は、中学生にしか見えない子とのデート登校を決めちゃうロリコン野郎だった! みたいなね。まあでも本望だよね。あーんなアッツアツの様子、見せびらかすんだもんね」
怒り心頭の恭介は、「いや、あれは違うっての……」と言い返そうとするが、聞く耳持たずの京香は更に続ける。
「まあ安心してよ。私は寛容だから、五十人くらいにしか広めないしさ。いやー、楽しみだ。どうなるんだろね、これからのあんたの学校生活は」
言い捨てた京香は最後に、ふん、といった感じで恭介を睨み、席に戻っていく。
しばらく固まる恭介だったが、やがて夏希の席を歩いて過ぎて、よろよろと自分の椅子に座った。