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翌日、恭介は七時に目を覚ました。すぐにがばっと起き上がり、体の後ろで肘を組んでストレッチを始める。
(よし、今日も今日とて体調は完璧。試合で活躍する様が、明確にイメージできる)
確信した恭介は、てきぱきと制服に着替えて一階に降りた。キッチンでは母親の恵子が、味噌汁の味見をしていた。
「おはよう恭介。よく眠れた?」
大らかな笑みの恵子の問いに、「おはよう。気遣いありがと。ばっちり寝られたよ」と恭介は淡々と返した。
挨拶を終えた恭介は炊飯器を開けて、茶碗に白ご飯をよそい始めた。
働かざるもの食うべからず。厳しい父親に育てられた恭介には、この言葉がしっかりと染み付いていた。
恭介の持つ山盛りの茶碗を見て、恵子が口を開く。
「相変わらずたくさん食べるのねぇ。感心するわ」
「試合の日は、炭水化物はしっかり取らなきゃちゃんと動けないから。食べるのも準備の一つってわけ」
きっぱりと言った恭介は、ダイニングの長机に茶碗を置いて再びキッチンに戻っていく。
恵子は味噌汁と卵焼きを恭介に手渡し、笑顔を浮かべた。
「頑張りなさい。怪我には気をつけてね。わかってるだろうけど、」
「ああ、ありがと」
ダイニングに向かう恭介の背中を見て、恵子は満足そうな表情を浮かべる。