目次
ブックマーク
応援する
2
コメント
シェア
通報

第26話……魔法戦士への成長と砂金の発見

「エンチャント・ウェポン!」


 死霊のスコットさんに習った【付与魔法】を使うと、自分の愛剣であるミスリル鋼製のロングソードに赤い炎がまとわりついた。

 それはまるで、有名ロボットアニメのビームサーベルみたいだった。



「かっこいいポコ!」


「凄いわね、ガウ!」


 マリーとポココにも見た目が好評だ。


 試しにそこらの岩を切ってみると、カミソリで新聞紙を切るように、サックリと裂けた。

 ……これはなんだか、きもちいい。



「旦那様が魔石の代わりとなって、魔力を注入している形となりますので、残念ながら旦那様の魔力が切れたらただの剣に戻りますよ」


「あらら」


 スコットさんに言われ、私は少し残念な気持ちになる。

 これは有限な魔法剣といったものだったのだ。



「いやいや旦那様。巨人族で魔法が使えるものなど、ほとんどおりませぬぞ、有史以来数名と聞いております。旦那様は特別なおひとなのです。自信をお持ちになってください」


 スコットさんにそう言われると、嬉しくなるのも人情だ。



「ガウ、凄いね!」


「すごいポコ! 選ばれた巨人ポコ!」


 マリーとポココに褒められて照れる。


 私は嬉しくなって、近くの森に出かけ、おもに狼型などの魔物を斬りまくった。


 力の劣る人間の状態でも、スラスラ魔物を倒すことが出来たのだ。

 自分がかなり強くなったと実感できる瞬間だった。



 スコットさんが言うには、いままで火の精霊サラマンダーの力をまるまる一匹分手にした魔法使いはいないそうだ。

 又、人間の魔法使いより遥かに強靭な体という媒体があるため、その力の限界は計り知れないということだった。



「……ふう」


 少し戦闘を休んだ私に、嫌な前世の記憶がよみがえる。


 ……こんな力が前世の私にあれば。

 きっと無念な死に方はしなかっただろう。


 世界中で、今も力ない人たちが弑逆されていることを思えば、悲しくも感じた。



「よし、毎日修練だ!」


 ……もう二度と弱い自分に戻りたくない。

 それは私なりの小さな決意だった。


 さらに出来うることなら、他の存在も守れるような存在になりたかった。


 あのTRPG用に買った、立派な戦士のフィギュアのように……。




☆★☆★☆


 毎日、商人護衛などの傭兵の仕事をこなしながら、副業で行っている領地経営の仕事にも励んでいた。


 ……ある日、転機が訪れる。


 マリーたちと晩御飯のイノシシ肉のシチューを食べようかとしているとき、マリーがあることに気づいた。


「ポココ、なんでおててがキラキラしているの?」


「ぽこ?」


 マリーが昼間、山に遊びに行っているポココの手を見て言ったのだ。

 私も慌ててポココの手を見る。



「うあ、これは砂金かもしれないぞ!」


「すごーい!」


 マリーが目を【$マーク】にして喜ぶ。


 翌日、オークの鍛冶師の方に鑑定してもらうと、やはり砂金だということだった。


 古城から少し山の方へいった渓流に砂金があることが判ったのだ。

 すぐさま、ポココに先導してもらって、砂金が摂れる場所に出向いた。



「わぁ、本当にキラキラしてる!」


 マリーはご機嫌だ。

 ついてきたオークの鍛冶師たちも興奮を隠せない。


 ……金はこの世界でも、非常に高価な貴金属だ。

 パウルス王国の貨幣も金貨がほぼ最上位だった。



「金を見つけたは、いいのですがな……」


 鉱山を任せているドワーフの爺さんが口を挟む。



「これがご領主さまにバレたらどうなりますかな?」


「!?」


 ……そうだった。


 正直に報告すれば、王国の直轄地として取り上げられる可能性があるし、そこまでいかなくとも、領都のみんなが押し寄せてきたら、アッというまに砂金が無くなるのは明白だったのだ……。



「……でもさぁ、砂金が摂れるということは?」


「そうです、この辺りに有望な金鉱が存在するということです!」


 ドワーフのじいさんはニッと笑った。



「これは、傭兵なんてしている場合じゃないぞ!」


 ドワーフの女戦士ジークルーンにいたっては、金を掘る気満々だ。



 ……後日、金の話には緘口令を敷いた。

 そして、関係者以外立ち入り禁止にした。


 さらに、警備責任者兼採鉱責任者として、ジークルーンをあてがう。


 ……というか、彼女は自分で誇り高き戦士だとか言ってなかったっけ?

 まぁいい、こういうところを任せるには戦闘力も必要だったのだ。




☆★☆★☆


 金山の採掘用の人員は、いままで銅と鉄の鉱山で働いていたベテランゴブリンを投入。


 老ドワーフさんが仕切る銅と鉄の鉱山には、新しいゴブリンの奴隷を雇った。

 そのせいで、銅や鉄の鉱山の収益は一時的に下がる見通しだった。


 ……しかし、アッという間にまばゆいばかりの金が掘り出される。

 一般的な金鉱石は精錬が必要だったが、掘り始めたばかりということで、まさに山吹色に輝く金そのものが採掘されたのだ。



「やったわ! 金よ!」


「ぴかぴかポコ~♪」


 無邪気に喜ぶマリーとポココ。

 私も思わず顔がほころんだ。


 ……しかし、難題がある。

 これをどうやって権力者の眼をかいくぐって富と交換するかだ。


 そのまま市場に流せば、バレるのは必然だったのだ。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?