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第21話……ゴブリン達のリーダー、その名はルカニ

「旦那様、どうなさいますか?」


「う~ん、しばらく放置しておこう!」


「かしこまりました」


 スコットさんにゴブリンの集落への対応を求められたが、私はしばらく放置することとした。

 所詮は相手は低級魔族であるゴブリン。

 生殺与奪はこちら側にあると思っていたのだった。



――数日後の夜。

 ライアン傭兵団のアジトでの集会を終え、マリーたちと古城へ戻る道すがら、古城の方から火の手が見えた。

 嫌な予感がする中、若いオークが駆けてきた。



「ご領主様、大変です! ゴブリンどもに夜襲を受けました!」


「な……なんだと!」


 私達は急いで森を抜け、古城の近くまで急ぐ。



「燃えてるポコ!」


「あ、あ、私のお部屋も……」


 古城の周りにあるオーク達の住み家のみならず、古城にまで火の手は廻っていた。

 マリーの部屋らしき窓からも煙が上がっていたのだ。



 ……チクショウ。

 私の甘い考えと油断が、敵の先制攻撃を許した結果となってしまった。

 魔族同士の縄張り争いは、やはり見敵必殺だったのだ。

 私は前世も併せてはじめて強者の立場となり、奢っていた一面はどうしても否定できなかった。




☆★☆★☆


――翌朝。

 被害が明らかになる。

 苦労して建てた水車小屋は壊され、小川に架けた橋も落とされた。

 その他、多数の建造物が焼失するという大被害を受けてしまっていた。



「ゴブリンの奴らめ! ゆるさんぞ!」


「ぽこ~!」


 ポココと一緒に憤るのは、オーク族の次世代当主候補のバルガス。

 生粋のオーク族の戦士だった。



「野郎ども、反撃だ!」


「おお! やってやるぜ!」


 家々を焼かれたオーク達は憤っていた。

 格下の低級魔族であるゴブリンにやられっぱなしでいるわけにはいかなかったのだ。


 ……しかし、油断はあったとはいえ、ゴブリン達がきちんと統制をとって襲撃してきたのは意外だった。

 優秀なリーダーでもいるのだろうか?

 油断は禁物だな。


 私はオーク達に命じて、今まで未着手だった防衛設備を整えた。

 集落の周りに掘りを巡らせ、柵を備えた。

 加えて、見張り台や、簡易の門や櫓も作ったのだった。




☆★☆★☆


「ご領主様! 言いつけ通り、勇敢な10名を選抜いたしましたぞ!」


「ありがとう!」


 私とゴブリンの集落に乗り込むのは、マリーとポココ、スコットさんとバルガスを含めた10名の屈強なオーク達と決めた。



「いくぞ!」


「「「おお!」」」


 我々は暗い森を抜け、ゴブリン達の集落がある小高い台地を目指す。

 ……いざ、復讐の時だった。



「こっちぽこ!」


 ポココが匂いでゴブリン達の足跡をたどる。

 2時間も走れば、ゴブリン達の集落を見つけることが出来た。



「……結構大きいな」


「ですねぇ」


 木の上からひっそりと眺めると、ゴブリン達の集落は大きかった。

 老人や子供も併せれば1000名以上は住んでいそうな、今まで見たこともない大集落だった。



「よし、陽が落ちるまで待つぞ!」


「了解でさぁ!」


 此方の貴重な戦力であるスコットは、日中は活動できない。

 それに、今回は夜襲の仕返しなのだ。

 是非とも、夜に意趣返ししたかったのだ……。




☆★☆★☆


――日の入り後。


「かかれ!」


「「「おう!」」」


 オークのバルガス達が、ゴブリンの集落の柵を静かに引き倒す。



「ファイアーボール!」


 マリーが放った火炎魔法が、突撃の合図だった。

 10名のオーク達に加え、死霊のスコットさんが呼び出した骸骨剣士たち8名もゴブリンの集落に突っ込んだ。



「出でよ! 我が僕たる戦士たちよ! 眠りより一時目覚め給え!」


 私はスコットさんから教わった闇の召喚魔法を唱える。


 巨人の巨躯に精霊サラマンダーの魔力が激しく融合。

 結果、50体を超える大量の骸骨剣士たちを呼び出した。



「流石は旦那様、筋がよろしい様で!」


 スコットさんに出来を褒められる。

 すぐさま呼び出した骸骨剣士たちに進軍を命じた。


 我々は、虚を突かれ混乱しているゴブリン達を切り伏せ、集落に火を放った。


 やられたらやり返す。

 これがこの世界での生きる道だったのだ。


 沢山のゴブリン達を切り捨て、余裕があれば、その核たる魔石も拾った。

 水瓶を叩き割り、住居も破壊していった。




☆★☆★☆


 ……暫く襲撃を続けると、



「狼藉をやめよ!」


 風格のあるフードをまとった者が現れる。

 ゴブリンたちのリーダーだろうか?


 ……どうやら魔法使いの様だった。



「雷撃よ、我が敵を撃ち滅ぼせ! サンダーストーム!」


 電撃魔法が骸骨剣士たちを打ち砕く。

 かなりの術者と思われた。



――ビシッ


「くっ! 飛び道具とは卑劣な!」


 魔法詠唱の隙を見て、私の強弓から放たれた矢が、魔法使いの腕に刺さる。

 ……魔法使いに卑怯とか言われたくないのだが。


 捕まえて、フードを剥ぎ取ると、赤色の髪と清楚な顔が現れる。


 ……というか、女!?

 しかも、ゴブリンではなく、ハーフエルフといった感じの顔立ちだったのだ。



「ご領主様、そろそろ潮時かと!」


「わかった、退こう!」


 バルガスに言われ攻撃を中止。

 とりあえず、この魔法使いを捕縛したまま、一時集落外まで撤退することにした。



「ガウ、この娘だれ?」


「……さぁ? 誰だろう?」


 集落外で待機していたマリーに、この捕虜はだれかと問われる。

 実は私の方が知りたかったのだ。



「我が名はルカニ! ゴブリン達の女王ぞ!」


 警戒して猿轡を外すと、魔法使いの捕虜が名乗る。

 どうやら、ゴブリン達のリーダーであることには間違いなかったようだった。


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