自分に似ている人間に初めて会ったのが久留美だと言いましたが、私は親とはまったく髪の毛一筋ほども似ていません(まさに髪質も違います)。
例えば、十歳・二十歳・三十歳、どのタイミングで「実の子じゃない」と打ち明けられても「ああ、やっぱりそうなんだ」としか思わなかったと断言できるくらいに似ていない、どころか正反対です。
それなのに、久留美は祖母である私の母に少し似ているんです。
彼女の七五三代わりの記念写真(私はそういう行事は一切しません)が部屋に飾ってあるんですが、表情なのか角度なのかこの写真だけなんです。
多少面影があるという程度ですが、気づいたときはまさに衝撃でした。
──ああ、あの人本当に私の親だったんだ。
その時、生まれて初めて心の底から母親と「実の母子なんだ」と合点が行きました。四十過ぎてからようやく。
それまでは毎日のように写真を見ていても感じたことはなく、「ある日突然」でした。
いま直接久留美の顔を見ても、別に母に似ているとは思いません。例の写真だけ。
本当に不思議です。