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【12:息子2】

 実は雅巳について(の最大最悪の。一人だけ中学受験せずに進んだ公立中学校で教員に殺されかけました)は、すでに「実話七割の、あくまでもフィクション」作品で書いてしまったためここで繰り返す気にはならず、書くことがあまりないんですよ。


 この『事件』については、「熱中症アラート的なものが発令されているにも拘らず、運動部の活動を強行すべく蒸し風呂のような体育館に普段は外で活動する部活の生徒を詰め込んで走り回らせた」結果、熱中症が続出して問題になった、というものです。


 雅巳(下の息子)は、連絡が来て夫が迎えに行った時にはすでに立ち上がれず話せない状態だったようです。

 すぐにかかりつけの小児科に連れて行き、普段はいかにも優しい小児科医そのものの穏和な院長を「〇〇中学ですか! またか!」と激昂させたそうです。後で夫に聞きました。

 院長が「学校での事故(あるいは事件)」として届けた、というより当然ながら受診したのは我が子だけではありませんからね。

 救急車さえ呼ばなかったのは隠蔽するためでしょうが、隠し通せるわけもないのにそんなことさえ想像できない連中が一体生徒に何を教えられるんでしょう。

 「自分のようなクズ人間にはなるな」という、反面教師の背中を見せるためだけに税金で養われているんですか?


 雅巳をひとことで表すなら、「兄妹三人の中で一人だけあまり頭が良くない(婉曲表現)、勉強ができない」でしょうか。

 とにかく家庭内では、すべてにおいて「できない子」なんです。

 それでも夫の直幸が学校に行った際、「同級生の中にいたらまーくんが普通の子だった、全然目立たなかった!」と話していたので、和巳と久留美のほうが通常ではないんでしょう。


 もちろん雅巳にもいいところはあります。

 そもそも私は自分が比べられるのが大嫌いだし、他人との比較に意味があるとは感じません。

 だから我が子同士にしろ他の子達とにしろ比べること自体をしないですね。

 たとえ「この子、何もできないな……」とは思っても、「お兄ちゃんは、妹は、〇〇なのに!」とは口にしたこともないしそんな気もないんです。


 雅巳は勉強は確かに全然できません。

 高校時代、二歳違いの妹が同じ学年になって同じ模試を受けたら、科目によっては偏差値ダブルスコアもあったくらいです(例ではなく四十以下と八十以上ですね……)。

 それどころか、雅巳が高二、久留美(娘)が中三の時にたまたま「同じ模試」(久留美は塾でかなり先取りしていましたから。中二で数学IIに入っていました)を受けた際にも、妹のほうがはるかに成績は上でした。比較対象にもならないレベルで。


 けれど雅巳は、運動神経は結構良かったんです。

 背は高くないのに(これも三人の中で一人だけ高くない。平均あるかないか程度)、高校で男子バスケットボール部のキャプテンでした。まあ一般より少人数の高校で部員が少なかったですからね。

 どこから見てもキャプテンには向いていないと感じるのに、そんなに人材がいなかったのか!? と驚愕はしましたが。


 背は普通でかなりの細身ですが、骨太で意外と筋肉質なので割とガチっとした体型なんですよ。小学生の頃、水代わりに牛乳を飲んでいたのでそのせいもあるのかもしれません。

 牛乳のカルシウムは吸収しにくい上カロリーも低くないので、カルシウム摂取なら小魚とか他のものの方がいいんですが、とにかく大量に飲んでいたので……。

 ピーク時は週に二十リットル買っていましたから。

 常に冷蔵庫に牛乳パックが四、五本入っていましたね。


 しかも、牛乳をそのまま飲むのは家族では雅巳だけ。

 料理に使ったり飲み物(ココア等)に入れたりでそれなりには使うんですが、雅巳一人で四分の三は飲んでいたんじゃないかな。

 給食でも二百ミリリットルパックが出るため、「牛乳は日に一リットルまで!」と制限をつけていましたが、絶対二リットルは飲んでいたと思います。

 それでもあばらが浮くくらい細いままなんですが、見た目よりずっと体重はあります。骨格がしっかりしているのと、脂肪がなくて筋肉の重さだから。


 雅己は兄妹の中でも自分の名前が好きです。

 本名(今作中の「淺尾 雅己」ではなく)は同じく漢字四文字で読み六文字ですが、トータルの画数が六十近いです。

 学校の名簿でも、一人画数が多すぎて黒いので目立つくらいでした。

 模試等で表紙に名前を書く形式だと、雅己がまだ名前を書いている間に周り中から表紙をめくる音が聞こえたそうです……。

 それでも「この名前がすごく好き」という彼はある意味すごいなと感心します。





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