異動したころは雅巳が入園したばかりの保育園児で、熱を出したの具合が悪いのとお迎えの要請がしょっちゅう来るわけです。
それは一向に構いません。向こうも仕事ですから何の文句もない。
我が家では育児の責任者は直幸で、保育園の保護者連絡先にも彼の名前と職場の電話番号を届けていました。
保護者を直幸にするためもあって子どもは彼の姓なんです。
問題は、我が家の育児の主体は父親で保育園からの連絡もすべて父親(直幸)の職場に、としつこいくらいに確認したにも拘らず、平然と私の職場に掛けて来られたことです。
園には「連絡は必ず父親に。絶対に母親(私)の職場には掛けるな」と書面で提出し、園内部のお迎え用の名簿にも直幸の職場しか載っていません(のちに確認しました)。
それを、時間に追われる中
自分から勝手に無意味な仕事を増やしておいて「忙しい・待遇が悪い」などと、その頭の悪さでは保育士が世間的に低く見られても無理ないんじゃないですか?
むしろ同類として括られる正常な保育士さんがお気の毒です。
そういえば今はおそらくないですが、当時は園児の保護者にも名簿が配られていました。住所や電話場能、保護者の氏名もすべて一目瞭然、個人情報の塊のような小冊子です。
そこにも保護者名としてまず直幸、そして私のフルネームを載せていました。
一般的には「淺尾 和巳」の保護者欄に「直幸」「聖子」ですが、我が家は「直幸」「西野 聖子」と記入していました。
ああ、それよりも今は個人の携帯に掛けるのが主流でしょうね。もう保育園なんて十五年前に縁が切れたのでわかりませんが。
『淺尾さんをお願いします』
「そんな人はいません!」
保育園からの電話に、部署内はちょっとした騒ぎになりました。
当然ながら、職場では私は単に「西野」です。私の夫が「淺尾」という姓なのを知っている課員なんてほぼいないんです。
上司だけは夫の姓が淺尾だと知っていたため何とか私に繋いでもらい、そのときは私から直幸に連絡して迎えに行かせました。
別に結婚して子どもがいることも別姓のことも隠してもいないし隠す気さえないですが、プライベートの友人関係ならともかく職場で同僚の家庭の事情なんてどうでもいいでしょう。
少なくとも私は、異動で何度も変わった隣の席の人の配偶者の職業も年も知りませんでした。
そもそも結婚してたかどうかも今思えば曖昧です。興味もなかったですしね。
後日、保育園には改めて話し合いに行きました。
園長と主任に事情を説明し、「絶対に! 私の職場には!! 掛けてくれるな!!! 子どものことは夫に!!!! 私のはあくまでも『緊急連絡先』だから!!!!!」と執拗に念を押して来ました。
連絡用の名簿に二人の名前が並んでいたらまだわかりますが、我が家は入園時に強硬に申し入れて夫のみにしています。
仕事柄、直幸は内勤で必ず連絡がつくので問題もない。
そのために携帯電話も持つようになりましたから余計です。
「なぜ余計な手間を掛けてまで私なのか」
名簿にも私(母)の番号なんて書いていないのに、調べてまで直幸ではなく私に掛けたのは何故!? と理由
私は直接会ってもいないので、園長が問い質した際の話として聞かされました。
それ以来、私の職場に掛かって来ることはなくなったのでまあよかったです。
当時は子どもが小さかったのでまだしも、今の職場では私が結婚(を継続)していることを知らない人が居ても不思議ではないですね。
私は職場では自分の話は一切しないので。
子どもがいるのは、娘が大学に合格した際に他の部署の知り合いが「おめでとう」と言いに来たので、その場に居た人は知っている筈です。