目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第32話 ダンジョンの管理者

「……それはイヤです。私は主様と、ずっと過ごしたいです」


「……なんなのよ、いきなり解放とかって。ちゃんと最後まで責任を持ちなさいよっ。もお」リリスがムスッとした表情で言ってきた。


 解放という言葉にあーちゃんが反応をした。「解放? 役に立たなければ解放してくれるの?」


「ディアブロは、ダメだろ〜暴れそうだしなぁ。というか、解放されたいの?」ジト目であーちゃんを見つめた。


「……いや……初めの頃は解放して欲しいと思っていたけど、この暮らしも悪くないかな〜。レイニー様と、いればなにかと騒ぎが起こるし、飽きないしねっ♪」あーちゃんが楽しそうに言ってきた。


「それよりさ、この先に……ロディーが傷付けた女の子がいるからね! 次、傷付けたら二人とも……この中に閉じ込めるからね〜」二人に手のひらを見せるように差し出した。


 レイニーの手のひらがゆっくりと上向きに開かれると、その上に奇妙な現象が現れた。まるで空間そのものに穴が空いたかのように、不気味な黒い穴がぽっかりと浮かび上がる。その穴からは、まるで炎のように陰が揺らめき、不気味なオーラが周囲に漂っている。


 その異次元の穴は、見る者に底知れぬ恐怖を与えるもので、その中を覗き込むと、まるで無限に続く闇が広がっているように見える。穴から漏れ出す陰は、まるで生き物のようにうごめき、周囲の空気を一層重く冷たくする。


 揺らめく陰の中からは、かすかに異次元の叫び声や呻き声が聞こえてくるような錯覚に陥る。その不気味な音は、心の奥深くに刺さり、恐怖と不安を呼び起こす。聞くまでもなく、目の前にあるものが極めて危険なものであることを誰もが本能的に感じ取ることができる。


「これは、異次元牢獄って呼ぶことに決めたっ♪」レイニーが明るく言うが、これを見せつけられた二人は恐怖で動けずに見つめていた。


「これって、何なんですか?」ロディーが怯えた表情で聞いてきた。


「だから、異次元牢獄だって。ただの無の空間だよ〜。時間も光も存在しない、ただの無の空間かな」と、レイニーが軽く説明をした。


「そ、そんなもの……怖くなんて無いわよっ。わたしにも使えるもの……」リリスが震えながらそっぽを向いて、ツンとした表情で答えた。


 あーちゃんが、リリスの方を向いて話しだした。「リリスがいう空間魔法とは別次元だよ。そこは、わたしでも抜け出すことは不可能なんだよね……。不死という事が逆に最悪につながる場所だよ。永遠の時を、存在するだけの無の空間なんだよ……コワイなぁ」あーちゃんがリリスに補足した。


 リリスが、あーちゃんの説明を聞いて怯えた表情になり、動揺した様子だったが「そ、そう……別に、仲良くすれば良いんでしょ。言うことだって聞くし、問題ないわね。まあ……あの時は、ダンジョンに魔物を発生させて人間に恐怖を与えようと計画してたのを見つかっちゃって、焦って……殺せと命じただけよ。べつに……あなたたちに恨みがあるわけじゃないもの」リリスが必死に言い訳をして来た。


「ボクは、ただ命令に従っただけですから。ボクも、なんの恨みもないですので……仲良く出来ます! というか、ボクと仲良くしてください!」ロディーがリリスに続いて言ってきた。


 レイニーの手のひらに浮かぶこの異次元牢獄の穴は、まるで全てを飲み込み、消し去る力を持っているかのようだ。その闇の力は、触れるものすべてを異次元の牢獄へと引き込み、二度と戻ることができない恐ろしい運命を与える効果は絶大で、二人にも恐怖心を与えていた。


「まー仲良くして、裏切らなければ大丈夫だからさ♪」そう言うと、異次元牢獄を消し去った。


 二人がホッとした表情になり力が抜けたように、その場に座り込んだ。


「二人が傷つけようとした子は、俺の大切な友達で仲間なんだ〜。それにお父さんにも剣術を習っているしさぁ」


「ボクも剣術には自信があります。レイニー様」ロディーが、自分を売り込んできた。まるで可愛い子犬のように、尻尾を振っているようだった。


 なんか良いね〜。二人は、武術と魔法の先生かな? ってことは、ディアブロは? 魔法も教えてくれないし……武術も教えてくれないんですけど。二人より強いんだよね?


「見捨てないでくださいね……レイニー様ぁ……」ロディーが甘えるように寄り添ってきた。


「わたしも……一緒にいてあげるから。貴方も責任を持ちなさいよねっ!」リリスも近寄ってくるが、そっぽを向いたままだった。それが、照れ隠しだということが伝わってくる。頬を赤くさせ、目でチラチラと俺の様子を伺っているのがバレバレだった。


 二人の実力が分からない。レベルは1なのは知ってるけどさ。気になったので実力を聞いてみた。「ここに現れる魔物は倒せるの?」


「……わたしをナメないで。楽勝よ」リリスがムスッとした表情で答えた。


「二人とも子供の姿になって能力も落ちてるけど、大丈夫なの?」以前なら、余裕だろうけどさ……その体に転生をしての実力を知りたいんだけど。


「え? ……たぶん……」思い出したようで、俯いてしまった。あぁ、やっぱり転生前の実力を言ってたのね。


「ここで現れる魔物はゴブリンですので、大丈夫だと思います! ボクにお任せを!」ロディーが地面に落ちていた木の枝を持ち構えた。


 って、おいおい。木の棒で戦う気なの?? 相手は、低位のゴブリンだけどさ……


「ここってダンジョンだよね? 宝箱とかに武器とか入ってたりするんじゃないの?」ダンジョンといえば、宝箱でしょ! それがなければ……ただの魔物の巣窟じゃん。なんの魅力もなければ、誰もそんなところに危険を犯して入りこまないでしょ。


「あ! そうでした。冒険者への餌として、武器や防具と財宝を配置していました」ロディーが思い出したように笑顔になったが……暗い表情になった。


「どうしたの? なにか問題?」え? なにを急に暗い顔をして??


「はい。この階層には……古びた剣が数本と、防具を入れておきました」古びた剣で十分じゃないの? ボロボロの剣じゃなければ戦えるし。


「とりあえずさ、ここからその剣が入っている宝箱って遠いの?」遠かったら……俺がそこまで護衛をすれば良いか。それに、リリスもいるし……実力は分かるかな。


「すぐ近くにあります」とロディーが嬉しくなさそうな表情で返事をした。


「そこに行く間に出てくる魔物は、リリスが倒してみてくれるかな」


「分かったわ。見てなさい! 役に立つんだから! わたし、強いって思わせるっ!」リリスが小さな胸を張り、やる気を見せた。


 このダンジョンを復活させたのは、この二人なわけだ? 書庫で封印されたダンジョンがあるって書かれていたよな……。悪魔に封印を解かれたのか、ディアブロの封印も劣化してたしなぁ。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?