逃げ惑うダイモンを黒炎球がゆっくりと後をつけ、転移で逃げるが距離は縮まらない。なぜなら黒炎球も転移をし追いかけてくる。
「黒炎球が転移を?」ディアブロがレイニーを見つめ聞いた。
「えへへっ。魔法も進化したのぉ〜♪」嬉しそうな顔で言ってきた。
「進化ですか?」ディアブロが驚いた表情をして、聞き返した。魔法の進化など聞いたことがなかった。
「うん。あの悪魔が転移を使ったじゃん? 俺もできるかな〜って思って試しに使ってみたのっ♪」
ドン!!と言う音とともに黒炎の火柱が上がり洞窟内に黒炎が燃え広がり恐怖を与えたが、焼き尽くす対象はダイモンだけのようだった。
「……脅かさないで下さい……寿命が縮みました」ディアブロが、黒炎に驚き両手で防御態勢をとっていた。
「ん〜脅しじゃないんだよね。対象を全てとすれば、黒炎が届いた場所は全て黒炎で燃えてるよっ♪」
「……え? やっぱり洞窟内全てが被害出るじゃないですか!」レイニーが、サラッと言っているがディアブロは顔を引きつらせながら言い返した。
「それ、人の家で大暴れしてた人が言うセリフかなぁ〜?」レイニーにジッと見つめられたディアブロは、顔を逸らして燃えていたダイモンを見つめていた。
「黒炎なので、魂まで燃え尽きるのか……哀れな奴め。まあ、相手の強さを見極められなかった己の熟練不足を恨むんだな」ディアブロが呟いた。
「あ〜、今回は怒りでさぁ〜すぐに殺さずに復活をさせて、何度も殺そうと思ってるから……魂までは焼かれないよっ♪」仲間を傷付けられて、ラクに死なせるワケがないじゃん。
「……私より、悪魔らしい発想ですね……恐ろしい」とディアブロが声で呟いた。
「すぐに殺すのも勿体ないじゃん。仲間を傷付けたんだよ?」その言葉にディアブロは恐怖した。それと、レイニー様を怒らせてはダメだと改めて忠誠を誓った。
ダイモンの身体が燃え尽きて魂が転生準備に入ったらしく、その魂が輝きながら俺の目の前にやってきた。あれ? 悪魔は不死の存在なんじゃ?? 肉体が復活するんだよね? 思ったのと違うんですけどっ!?
「わぁっ。な、なに、なに? え、おばけっ? え? こわぁーい!!」隣りにいたディアブロに抱きついた。
「おばけ? それは存じませんが……ダイモンとやらの魂ですね。文句を言ってくるようならば、私が消し去りますので……ご安心を」
「ちがう、いや……違います。どうか、私を配下にお願いしたく……恥ずかしながらお願いをしに参りました。どうか許されるならば、転生をしたのち配下に……」ダイモンの声が脳内に響いてきた。
転生したのちに配下って……早くても15年後って事でしょ? 配下になるのは勝手だけどさぁ……そんな先のことは忘れちゃってるって。
「配下になるんなら、様子見も兼ねて、今ここで転生して俺に仕えてよ。それで〜なんだっけ? 従者契約だっけ? それをしてもらおうかな」俺が、プカプカと浮かぶ光る魂だというモノに、ディアブロに隠れながら顔を出し言った。
「私も、ここで転生をしたいのですが、転生先は選べず……悪魔界で悪魔に転生をし、生まれ育つしかないのです」ダイモンが、申し訳なさそうに言ってきた。
ん……本人も望むなら、ここで転生をすれば良いんじゃないの? たぶん出来ると思うけどなぁ。
「そう、ここで転生をしたいならすれば良いじゃん。転生するなら、新しい名前を付けないとかなぁ……えっとロディー……が良いかなぁ。じゃあ、ロディー! これから転生ねぇ〜♪」一方的に話し、転生の準備をした。
ダイモンの魂に手を翳し転生をするイメージをして、仲間を傷付けた罰として8歳児となってもらって、他にもレベル1からのステータスね、暴れられても困るしさぁ〜。それより下だと俺が面倒を見ることになるし……それは勘弁してほしい。
外見もダイモンの幼少期を勝手にイメージをして、外見を可愛目にしておいた。だって、仲間で子供で……見た目が悪魔のような姿だと……一緒に行動すると支障が出そうだし。どうせなら癒やされたいじゃん!
ダイモンの魂が光を強め、閃光を放つほどに輝きが増すと光の粒子が周りから集まりの闇のオーラを含む紫色の霧が立ち込めた。
すると……静寂の中、古びた祭壇の前で一人の少年が跪いている。銀髪の少年、ロディーは、かつての悪魔の子爵としての姿を持ちながらも、今は無邪気で純真な8歳の少年として転生している。彼の手は合わされ、目には深い感謝の意が込められている。
その視線の先には、レイニーが立っている。ロディーに新たな命を授けてくれた恩人であり、彼の存在を成り立たせる唯一の存在だ。ロディーは、心からの感謝と敬意を込めて、再びレイニーに跪く。その動作は、かつての高貴な子爵としての誇りと、今の無垢な少年としての素直さが見事に融合している。
ロディーの大きな瞳はキラキラと輝き、レイニーを見上げるその表情には、ただならぬ感謝の念が表れている。彼の浅黒い肌と銀の髪が、暗い森の中で一際映えて見える。高貴な貴族の衣装は、彼の小さな体に豪華にまとわれており、その姿はまるで童話の中の王子のようだ。
レイニーに対して微笑むロディーの姿は、彼が再び生きることができる喜びと、レイニーへの絶対的な信頼と敬意を象徴している。
「ロディーの名を謹んで拝命をさせて頂きます」再び頭を下げた。貴族の大人のセリフだが、声が幼く可愛く『貴族ごっこ』をしているかのように聞こえてくる。
服装も良いんじゃないかなっ♪ 格好も人間になって能力は、そのまま引き続き……悪魔にしちゃったーえへへっ♪
「さ、帰ろうかなぁ〜」そろそろ帰らないと……マズイかもなぁ。
「お待ち下さい。レイニー様」可愛い声で呼び止めてきた、ロディー。
「ん? なに?」人魂のおばけの問題が解決したので、笑顔で聞き返した。
「あ、あの……ボクに命令をしていた、伯爵様がここにいるのです」顔を伏せて言ってきた。
あぁ……もう一人の気配が、そいつかぁ。偵察に送り込んできている悪魔かと思ったけど、ちょくせつ本人が見張っていたのね。結界でも張っているのか……害意や殺意を感じなかったなぁ。
「わかった〜。ディアブロも擬態して。もう帰るよ」
「かしこまりました」と、ディアブロが素直に返事をした。
「え? 放置されるのですか?」ロディーが、驚きの表情をして聞き返してきた。
「ん? 放置なんてしないよ〜。俺の仲間を殺せって指示をした人でしょ……!? 逃がすわけ無いじゃん♪」
「伯爵様なので、ディアブロ様の加勢も必要かと……。相手は伯爵様なのです。魔力も桁違いですし、策略にも長けていますし。攻撃を仕掛けに行けば、必ず罠を張り巡らせているはずです」心配そうな表情をしてロディーが訴えてきた。