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第26話 目的地の山へ

 えっと……これ以上はキケンかもなぁ〜。エリゼがトラウマになっても可哀想だし。雰囲気がありすぎるよなぁ……。結界だけ残し、魔法攻撃は解除した。


 現れたら剣で倒してみたいし……と思ったけど、数歩しか歩いていないのですぐに森から出れた。


 はぁ……残念。魔法で倒したから魔物の姿も見てないし、倒した実感がないじゃーん。


 そのまま王都に戻り、父親に呼び出された。はい。当然ですね……


「レイニーよ、また問題を起こしたそうだな」わっ。ド直球できたよ。問題は……起こして無くて、起きてたんだけどなぁ……。それを解決したんだけど! うん。問題は起こしてない。


「え? 問題は起こしていませんよ? あれからお父さまが警備の改革をされたと聞いたので、気になって現状を見に行ったのですが……。所長がひどく、仕事をせずに部下の女の人と仕事中に楽しそうに話をしていたので、声を掛けると怒り……『忙しいんだ。邪魔をするな!』と言ってくる始末で。お父さまの改革の話は? と確認すると、『そんなものは知らん!』だそうです。なので、問題があると思い、所長を一時解任し、副所長を一時的に責任者にしたのですが……。すると所長が怒り出し魔法の攻撃を受けました」起こったことを、そのまま話した。


「……そうだったのか。改革は上手くいっておると報告を受けていたのだがな。実際は、その程度のものだったのか……」お父さまは、ため息を付きガッカリした表情となった。


「所長を捕らえた者が、やり取りを聞いていますのでご確認下さい。それと、城門の警備隊長さんが私を守ってくれましたっ! 改革は、すぐに効果はでないと思いますが……いい方向へ向かっている気がしますよ♪」あれ? 外出の事は怒られないっぽいっ♪


「レイニーよ、そなたは行動力があり頭も良い、これからもよろしく頼む」


「はいっ! もちろんですっ♪ おとーさまっ」と、駆け寄り抱きついた。それで、甘えとこうっと♪


「うむ。だが、キケンなことはするでないぞ!」抱きつかれて、苦しそうな声を上げる国王の声が鳴り響いた。


「はぁーい!」と元気に返事をして、しばらく甘え続けて部屋に戻った。



 ……翌日


 早朝から用意をしておいた馬車に乗り込み、エリゼと馬車で山へ向かった。


 ちゃんとした送迎用の馬車で、王国の紋入りではなく普通の一般的な送迎用の馬車だ。一般人は……馬車には乗らないけどね。


「わぁ! ちゃんとした馬車なんて初めて!」エリゼが窓の外を眺めて、嬉しそうに声を上げた。前回乗ったのは兵士を護送するタイプの馬車だったしね。


「あはは……たぶん……10分もすれば具合が悪くなると思うよ……。この直に来る振動に揺れがキツイんだよね」


「えぇ〜楽しいじゃん♪」エリゼが、左右の窓に行ったり来たりして楽しそうに過ごしていた。


 …………



 ………………「あ、あぅ……」とエリゼが声を上げた。馬車が道に転がっている石に乗り上げ、たまに大きな振動が直におしりと腰にくる。


 ………………



「お兄ちゃん……まだ着かないのぉ〜? 具合が悪くなってきたぁ……」エリゼが、具合悪そうに呟いた。


「ほら、横になって良いから休んでなよ」隣りに座っていたエリゼの肩を掴み、俺の膝に寝かせた。


「ありがと……お兄ちゃん♪」頬を赤くさせて、恥ずかしそうに横になった。


 俺の膝枕で横になったエリゼの頭を撫でて、寝ているエリゼの頬がぷにっとして柔らかそうで、指で触ってみると思った通りぷにぷにして気持ちが良い。これで……暇つぶしができて、さらに癒やされる♪


「お兄ちゃん……なにしてるの?」不思議そうに俺の顔を見上げて聞いてきた。


「エリゼの頬が柔らかくて、良い弾力してるなーって思って〜」


「えへへっ♪」元気そうに笑っていた。だけど、この移動方は……無いよなぁ……。遅いし、身体的、精神的にキツイ。


「エリゼとセリオスさんって、どうしてたの?」二人で歩いて往復をしていたとは考えられない。


「ん……とぉ……お父さんがね、馬を借りてくれて……それで移動してたの」


 なるほどね〜馬の方が早くて良いかもなー。でも、馬に乗ったこと無いんだよね。


 馬車で4時間掛かるところを2時間とちょっと掛かり目的地に着いた。


 御者には、待っててほしかったけど……半日も待ってもらうのは気が引けるし、帰ってもらった。帰りは近くの街で馬車を借りて帰りますかぁ。


 待ちに待った山に着くと、さっそくって思っていたけど……体が痛い。馬車の外に出て山の麓は緑の草原で二人で寝転がって少し休憩をした。


 エリゼが、ニィーと笑いゴロゴロと転がってきた。


「お兄ちゃんっ♪ お腹空いた?」寝こがりながら、両肘を付き俺を見つめて、首を可愛くかしげて聞いてきた。


「うん。少し空いたかもー」朝早くて朝食を抜いてきていた。


「ホント? えへへっ……じゃーん!」と、言いながらエリゼがバッグから包を出した。そこには美味しそうな匂がする物が入っていた。


「おぉ。なにそれ? なに?」


「えへへっ。あのね、お父さんがお腹が空いたら二人で仲良く食べなさいって〜♪」てっきり、エリゼの手作りかと思って期待したんだけど……。というか、あの言い方だったらエリゼの手作りだと思うでしょ。


 やるなーセリオスさん。エリゼがナイフで肉の塊を薄く切り、パンに挟んで渡してくれた。そういえば、エリゼは普段は平民が着るようなワンピースを着ているけど……騎士団長の娘で貴族なんだよな。


 普通に肉も、柔らかいパンも食べてるわけだし。扱い方も手慣れてるし。


「今は、これだけね。後は、お昼に食べよーね♪」


「うん。ありがとっ」 


 軽食を摂り、少し元気が出たのでアイテムボックスから剣を取り出しエリゼにも渡した。実力は少年兵よりは高いから、少しは頼りになると思う。……お遊び程度の魔物しかでてこないと思うけど。この辺りの魔物の反応が、低級の魔物の反応しか無いし。これなら二人で楽しみながら山頂に向かえるかなっ。


「さー、出発しよー♪」


「はぁいっ!」


 小さい魔物が現れると、二人で顔を見合わせてニヤッと笑った。


「どうする? エリゼも戦いたいんじゃない?」


「わたしに倒せるかなぁ〜?」というけど、顔が笑ってるじゃん。しかも剣を構えてるし……


「どーぞー♪」


「……う、うん。えいっ!」シュパッ!と剣を振り下ろし1撃で魔物を討伐できた。


「わぁーい! 倒せた! ねえ、見た?見た?」嬉しそうに振り返り満面の笑顔で聞いてきた。昨日の森とは雰囲気が違い、不気味な雰囲気もないし。


「うん。余裕そうだね〜!」というか、さすがセリオスの娘で剣の扱いが慣れていて剣がぶれていないし、剣のスピードが早い。


「まぐれだよー」と謙遜してるけど、日々の訓練の成果だと思う。これだと、俺の出番が無くても良いのかもなぁ〜接待の魔物の討伐だなぁ。日頃の感謝の気持を込めて、エリゼに付き合おう♪


「次は、お兄ちゃんね!」


「俺は、帰りで良いよ〜。二人で疲れちゃったら、強敵が出た時に困るでしょ〜」エリゼが楽しそうだったので、今は遠慮しておこうかな。


「あぁ〜そっかぁ。わかった! 行きは、わたしが頑張るっ♪」エリゼが胸の前で拳を強く握って、宣言した。


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