「はぁ……。ガキのお遊びに付き合ってられないっての……」副所長を名乗る男がチラチラと所長を気にしていた。
「でさ、警備兵ってなんだと思ってる? 街の治安維持だよね? 犯罪の取締だけじゃないんだけどなぁ〜犯罪を未然に防ぐって事が抜けてるんじゃない?」見てる感じ、手配をされている者を捕らえ、悪さした者を捕らえてるって感じだ。治安維持の予防が抜けてる。相談に来ても追い返す対応をしているくらいだしね。
「あぁ……そうだな。そんな余裕がないんだって、見て分かるだろ? 犯罪者を取り締まるので精一杯な状況なんだわ……」
「それってさぁ〜警備隊長は、知ってるの?」
「知らないだろうな……。所長が実績をだしたいんだとさ……って、そんな話をしてる場合じゃないっての。剣の貸出なんて、出来るわけ無いだろ! 帰れ、帰れ!!」普通に愚痴を漏らし、慌てて帰れとジェスチャーをした。実績ね……こんなんじゃなんの実績を作れるんだか。
「そう、なんとなく事情は分かった。改革は進んでないと言うか……変わってないってことねぇ〜」俺が納得した表情をして、呟いた。
「改革? なんだそれ……?」副所長が首を傾げていたが、ムスッした表情に変わった。
外が騒がしくなり、副所長が慌てだした。
「あ、ヤバ。さっ! 帰れ帰れ!」副所長が、俺達を放ってにこやかに外に出ていった。
「王都へ侵入をしようとしていた犯罪歴のある奴らを捕えた。指名手配をされてる者もいる……おっ!エリゼちゃんじゃねーか。こんな所で何をしてるんだ? 騎士団長様がいるのか?」俺達も、副所長を追って外に出たら、城門で捕らえた者を連行してきた。その兵士がエリゼを見て驚いていた。
「え? わぁ! 隊長さん、お久しぶりですっ」エリゼが知り合いに会えてホッとして笑顔になった。
「なんだ? 何かあったのか? 騎士団長が出てくるような大事か? まあ、そんな所にエリゼちゃんを連れてくるワケがないか」隊長と呼ばれる兵士が、自分一人で話しながら納得していた。
「お父さんは、お城で訓練を見てますよ。わたしは……これから遊びに行くのっ♪」エリゼが嬉しそうに話した。
「は? いやいや……お父さんに怒られるぞ。帰った方が良いって……」それとは反対に、顔色を悪くして小声で帰った方が良いと勧めてきた。
「お父さんからの許可と指示をされたもんっ。ちゃんと案内をしなさいって♪」自慢げにエリゼが話した。
「案内……? だれを?」隊長さんと目が合った。
「……そこの友達をか?」俺を見て、エリゼに確認をした。
「そうそう! お父さんの生徒なの!」エリゼが、いつものように元気に答えた。しかも、どこか自慢気に紹介をしてくれた。
「うぅ……ん……。団長が、女の子を二人で外に出すとは思えんぞ?」疑う目でエリゼを見つめて言った。
それを聞いていた副所長は焦っている様子だった。
「なぁ〜誰だ? あの人〜」と、俺がこっそりとエリゼに小声で聞いた。
「あ、あのね、王都の城門の警備隊長さんだよ」と、小声でエリゼが教えてくれた。
なら、ちょうど良いや……付き合ってもらっちゃおうっと。
「ちょっと良いかなぁ?」警備隊長さんに近づき、話し掛けた。
「なんだ?」隊長さんが、不思議そうな表情をしてきた。
「お父さまの改革は、知ってる?」小声で聞いて、可愛く首を傾げた。
「いや、お父さまって誰よ。改革って……なに?」警備隊長も一緒に首を傾げていた。
「王都の警備を改革するって話だけど?」可愛く話した。
「王都の警備の改革は知っているが……お父さまって……?」警備隊長は、薄々気づいている様子で徐々に顔色が悪くなってきていた。
「これ」と言い、チラッと国王の紋章の入ったナイフを見せると、警備隊長が慌てて跪いた。
「あ、それは良いから……エリゼの護衛を部下の人に頼めるかな?」出入りの多い、詰め所の前だったのでエリゼを放って置くと連れ去られたら困る。
「は、かしこまりました」
エリゼが警備兵に囲まれ、応接室へ連れて行かれた。勝手に応接室を使われて所長はムスッした表情で近寄ってくると文句を言い始めた。
「城門の警備隊長だから多めに見ていたが、許可なく勝手に応接室を使うとは……無礼だぞ、俺たちは王都の警備部隊所属で別の管轄だぞ! あとで厳重に王都警備隊長に報告し、文句を言ってもらうからな!」
「あーそれは、出来ないと思いますけど〜?」俺が、後ろで腕を組みそっぽを向いて、二人の会話に口を挟み元所長に言った。
「……なんだクソガキ、まだいたのか!? 子供の口出しする話じゃないぞ。おい!副所長、このガキを外に放おり出せ!」激怒した表情で、顔に血管が浮き出てるって……こんな感じなんだろうなぁ……という表情をしている。
俺と隊長の話を聞いていた副所長は堂々と無視をした。
「おい! 聞こえんのか!? 俺は、ガキをつまみ出せと命令をしているんだぞ! 上官からの命令無視は、厳罰だぞ! 貴様! 命令だと言っているだろ!」
「だよね。命令無視は厳罰だよね……? 警備改革を無視して改善が出来てないんじゃないの? 王都警備隊長も厳罰の対象かもね……」俺が呟いた。
「おい! これが最後の命令だぞ……これを無視すればお前を副所長から解任し、一般兵に降格だ! ガキをつまみ出せ!」と怒った表情をして命令をするが、目も合わせずに完全に無視をした。
「……もいい!! お前は副所長を降格とし、一般兵だ!」そう言うと、俺へ近づいて来ようとすると、隊長さんと兵士が立ちふさがった。
「そこをどけ! 俺が直々にクソガキを外に放おり出してやる!!」立ちふさがった兵士を掻き分けようと、兵士たちに掴みかかった。
「はぁ……ここの詰め所の警備体制に問題があると判断し、第3王子の権限で現所長を一時解任し副所長を所長とし引き続き業務を行って下さーい♪」俺にそんな権限があるか疑わしいが……問題があるのは事実だし、お父さまも聞けば納得してくれると思う。
「そんなガキの言う事を誰が信じるんだ? わっははは……城門警備隊長は信じるのか? 王子様が護衛兵を付けずに、この様な場所に現れるわけがないだろ! 馬鹿めが……!」体調の行動を見て大笑いをして、罵倒していた。
「困った人を助け保護するのが王都の警備部隊だと思うんですけどねぇ……。何の事情も聞かずに子供を追い出すって、どうなの? 困ってきてるのにさぁ〜」今更、元所長に意見を言っても無駄だと思うけど。
「業務の邪魔をするガキが何を言ってるんだ!? くそがきめ……俺様をナメるなよ……これでも喰らえ、ファイアショット!」所長がカウンターの中から魔法を放ってきた。当然、隊長と兵士が盾となり防いでくれた。
「はい。今ので……王族の殺害未遂になりました〜。なので、一時解任から重犯罪者となり裁かれまーす。捕縛を宜しくお願いしますねっ。隊長さん」